多様な愛の形を肯定できるように――温かな肯定感が心を満たすシンガーソングライターmoekiの1st EP

Interview
ポップスを軸とし、R&Bやロック、ダンスミュージックなど幅広いジャンルを横断するmoeki。スモーキーな歌声により注目を集める新鋭ミュージシャンが、EP『Between us』を2023年11月15日にリリースした。本作に込めた思いや曲作りのインスピレーション源について、メールインタビューで伺う。

TikTokやInstagram、YouTubeに投稿した弾き語り映像で注目を集め、そのスモーキーな歌声で注目を集めた北海道在住のシンガーソングライター・moeki。投稿はiri藤井風SIRUPVaundyなどのカバーに加え、オリジナル曲も。ストーリー性のある歌詞に自身の恋愛観や世界観を盛り込み、それらをR&Bやロック、ダンスミュージックといったルーツに裏打ちされたグルーヴィなビートと共に届けている。2021年に「Crazzyy」をリリースしデビューしてから、多彩なサウンドの楽曲を発表。その中でもポップスが軸としたキャッチーなメロディーが、多くのリスナーを魅了している。

父親がバンドマンということで音楽が身近な家庭環境で育ったmoekiは、Justin Bieber(ジャスティン・ビーバー)に衝撃を受けた。また、敬愛するgirl in red(ガール・イン・レッド)、Billie Eilish(ビリー・アイリッシュ)、iriに加え、邦楽ロックや現在カバーしているR&Bポップスも音楽スタイルに影響を与えているという。

今回、moekiがDIGLE MAGAZINEに初登場。11月15日(水)にリリースした全6曲入りの1st EP『Between us』のテーマ、曲作りの工程、12月に行う初ワンマンへの意気込みなどについて、メールインタビューで伺った。

大自然散歩、夜中のドライブなど。インスピレーションを吸収しに出掛ける日々

ーmoekiさんが初めて衝撃を受けた音楽体験はなんでしょうか?

小学生の時に偶然YouTubeで見つけた、Justin BieberのMVに衝撃を受けたことを覚えています。特徴的な彼のハスキーボイスと、音域の広さに惹かれました。昔から、自分のハスキーな声にコンプレックスがあったので、少し自分の声に自信を持てるようになったきっかけが彼でした。それから海外のポップにのめり込んでいきました。

ー敬愛するアーティストとして、girl in red、Billie Eilish、iriを挙げていますが、その他、音楽性に影響を与えている方はいますか?

高校の時に少しの期間だけバンドを組んでいた期間があり、My Hair is Badクリープハイプなどの邦ロックにも影響を受けました。キャッチーなメロディーに乗せる日本語の面白い音の使い方や言葉遊びは邦ロックから吸収できたと思います。オリジナル曲をリリースしつつもThe Weeknd(ザ・ウィークエンド)やSZA(シザ)などR&Bポップスなどもカバーしていたりするので、そのジャンルにも沢山の影響を受けていると思います。

ーどのような経緯で音楽活動を始めたのでしょうか?

元々は、音楽が好きな友達を作りたいという思いや自分の好きな曲を歌いたいという気持ちからカバー曲を投稿していました。中学生くらいの時からノートの切れ端にポエムや好きな単語を書き並べたりしていたので、その言葉たちを音楽という形にしたく曲を作り始めました。

ー曲作りの工程について教えてください。また、インスピレーションを得るために実施していることはありますか?

曲作りは、まずテーマを決めてそこからメロディーラインを作ります。テーマを決めた時点で自分が描きたい情景や使いたい単語や歌詞が浮かんでくるので、メロディーが完成してからその歌詞を埋め込んでいく流れです。インスピレーションを得るために家で絵を描いたり、映画を見たり、本を読んだり、湖や川で泳いで大自然の中を散歩したりしています。

それとはかなり対照的になってしまうのですが、夜の街に出て音楽を楽しめるクラブに行ったり1人で夜中ドライブして朝日を見たりもしています。その時の自分の心情にあったインスピレーションを探して吸収しに出掛ける日々から、様々なジャンルの音楽が生まれている気がします。

1st EPが様々な価値観を持った人たちの居場所になれるように

ー『Between us』というタイトルに込めた思いや、EP全体のテーマについて教えてください。

『Between us』というタイトルには、“2人だけの関係”“2人だけの秘密”など2人の世界を表せるようなタイトルにしました。EP全体では”様々な愛の形を肯定できるように”というテーマにしています。例えば、「メロウ」や「マイガール」では同性愛とも感じられるような歌詞の世界観を、「かわいい」では歳の差のある恋を。様々な価値観や愛の形を表現した曲を詰め込みました。

ー様々な愛の形が描かれる中でも、一貫してあたたかく多幸感のある空気感が作品を包み込んでいるように感じます。構成・コンセプトなど、制作前から決めていたことはありますか?

構成やコンセプトは決めていませんでした。作ってきた曲を並べた時に、全ての曲のテーマが一貫していることに気がつきEPという形にまとめたいなと思ったのがきっかけです。それぞれの曲は全て違う恋愛を描いていますが、“様々な愛の形を肯定できるように”、“様々な価値観を持った人たちの居場所になれるように”という思いが根底にあります。このEPを通してその思いが伝わると嬉しいです。

ー前半3曲のタイトルがカタカナ、後半3曲のタイトルがひらがなで統一されている点も目に留まりました。

気付いていただけてとても嬉しいです! “このEPが誰かの居場所になれたら良いな”という思いから、ひらがなやカタカナを使い温かい雰囲気や居心地の良さを表現したかったのです。

また、「スーパーカー」のテーマの一つでもある“子供心を忘れないように”という意味合いでも(歌詞に)わざとカタカナやひらがなを多めに使ったり、子供っぽさのある単語をあえて使っています。

ーアルバム収録曲の中で印象深い楽曲はなんでしょうか?

「スーパーカー」は元々、“空を飛べたり時空を行き来できる夢のような車なんだ!”という勘違いから生まれた曲です。

そんな車があればなんでも叶うし足りないものも満たされると思っていたけれど、本当はいつも無い物ねだりで大切なものはすぐそばにあるのでは?というテーマで作りました。足りないものを探す毎日ではなく、少年のようにまっすぐに愛をサンドしたり、おまじないをかけるような子供心を忘れない日々と寄り添えるような曲になっていたら嬉しいです。

ーmoekiさんの紡ぐ歌詞はストーリー性があり、楽曲の情景が目に浮かんだり主人公の気持ちに共感したりできます。本作はこれまで以上にその傾向が顕著だと思いました。歌詞を書く際に大切にしていることはなんでしょうか。

歌詞はほとんどがフィクションであって個人的な表現は少ないです。このEPに入れている曲は自分の恋愛を描いていないからこそ、聴いてくれる方の目線に立って解釈しやすくなっているのかなと思います。

歌詞を書く時は、自由な解釈で受け取ってもらいやすい歌詞作りを意識しています。またどの曲でも”2人”の関係にフォーカスしているので、ストーリー性が生まれやすいのかもしれません。

ー「マイガール」はTikTokに弾き語りデモをアップし、投稿されたコメントからインスピレーションを得て歌詞を考えたそうですね。言葉選びの際に大切にしたことはなんでしょうか?

「マイガール」のデモをTikTokにアップした際に、恋愛相談のDMをかなり頂きまして(相談相手が私で良いのか不安だったのですが…)、その内容は同性愛だったり、違う国同士の遠距離恋愛だったり。沢山のインスピレーションを頂いた出来事でした。なので歌詞の中では、“その2人の恋愛の中にこんな温かい言葉が存在してほしいな”、”2人にこんな言葉を贈りたい”という気持ちから言葉を選んでいきました。

ーこの曲のリファレンスとなった楽曲はありますか?

タイトルでも、歌詞の冒頭でも出てくる「マイガール」というワードは、girl in redの「we fell in love in october」からインスピレーションを得ました。「my girl」という一つのワードから彼女への愛おしさや彼女への想いが詰めこまれていて素敵だなと感じたのがきっかけです。

ーEPのサウンドについても伺います。本作はこれまでと比べてポップなテイストが強く感じられ、その中にヒップホップやR&Bといったmoekiさんのルーツを織り込むことで、生活に馴染む作品に仕上げているように思います。アレンジや音作りの面でこだわったことはなんですか?

アレンジや音作りでは、曲を描いていた時の心情や歌詞に込めた想いにフォーカスをしています。「かわいい」ではチルでムーディーなテイストとかわいさのあるビートを%CTOSHIKI HAYASHI)さんに作っていただいたり「スーパーカー」では溢れ出るドキドキをサウンドに詰め込んだりと、感情とかなりリンクしたアレンジになっているかなと思います。

夢は海外アーティストとのコラボ

ー先行配信された「マイガール」「メロウ」のビジュアルでは、牧歌的かつフィルムライクで、海外映画を彷彿とさせる画が印象的でした。ビジュアル・イメージで意識したことはありますか?

「マイガール」では、世界には様々な愛の形が溢れていて誰かの温かい言葉やちょっとした思いやりでその愛が溢れやすくなるのでは、というテーマから2人の距離感や世界観をよりポップに魅せられるようなビジュアル作りを意識しました。

「メロウ」では、気分屋で気まぐれな彼の帰りを待つ主人公が段々と眠りに落ちていく様子をビジュアルに落とし込んでいます。健気な彼の可愛らしさや2人のメロウな世界を表現できていたらなと思います。

ーリスナーにとって『Between us』はどのような作品になってほしいでしょうか。

EPが完成して、自分の作ってきた曲が一つのテーマで形としてまとめられた事に感動しました。リスナーの方々には、皆さんの生活や心に寄り添えるようなEPになっていてここが居場所なんだと心地よさを感じてもらえたらすごく嬉しいです。

ー12月23日(土)には札幌musica hall cafeにて初のワンマンライブを実施されますが、意気込みを教えてください。

今までは対バンやイベントに出演することが多く、ワンマンライブは初めてなので自分だけを見に来てもらえる事に本当に感謝で一杯です。なので、今まで有難うございますという気持ちと楽曲に込めた想いを、目を見てしっかり伝えられるようにしたいです。来て頂ける方には、自分のお部屋に遊びに来るような心地よく音楽を楽しんで頂けるような夜になったら良いなと思っています。

ー音楽家としての展望や長期的な目標はなんでしょうか。

今回のEPではポップスにまとめたのですが、前にリリースした「Crazzyy」や「A Rainy Night in NY」など影響を受けてきたR&Bの曲をまとめたEPの作成なども今後できたら良いなと思っています。

北海道から遠く離れた場所に住むリスナーの方々にライブで会いに行けるように、小さい頃からの夢である海外のアーティストとのコラボレーションなどができるように活動を続けていけたら良いなと思います。

RELEASE INFORMATION

1st EP『Between us』

2023年11月15日(水)リリース

収録曲
01.スーパーカー
02.マイガール
03.メロウ
04.ふかいうみ
05.かわいい
06.うららか

LIVE INFORMATION

<moeki 1st solo live「Between us」>

2023年12月23日(土)at 北海道・札幌musica hall cafe
開場18:30/開演 19:00
前売2,500円(+1Drink)/当日3,000円(+1Drink)

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moeki(もえき)

北海道在住。バンドマンの父の影響で音楽に興味を持ち、2018年からSNSでカバーやオリジナルの楽曲投稿を始める。自身の世界観や恋愛観をスモーキーな歌声に乗せ、ポップスを軸としながら、R&Bやロック、ダンスミュージックまでさまざまなジャンルを横断する。2021年11月に「Crazzyy」でデビュー。Girl In Red、Billie Eilish、iriを敬愛する。夢は札幌ドームでの始球式。
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