軽やかに世界を広げるaint lindy。アンディ・ウォーホルから影響を受ける柔軟なクリエイティブ|BIG UP! Stars #123

Interview

文: 黒田隆太朗  写:上村 窓   編:riko ito 

さまざまな形でアーティストをサポートする音楽配信代行サービス『BIG UP!』。DIGLE MAGAZINEが、『BIG UP!』を利用している注目アーティストをピックアップしてご紹介します。第123回目はaint lindyにインタビュー。

aint lindyの表現は、今まさに拡張されている最中なのだろう。Billyrromのギタリスト・Rin Aokiのソロプロジェクトであり、本格始動したのは2022年の夏。作詞、作曲、ラップ、歌唱、ギター、トラックメイクのすべてを自身で手がけるという、彼の自由なクリエイティブが発現する場所である。

海外のミュージシャンとも積極的に仕事を行うところは、このプロジェクトの特徴のひとつだろう。直近ではedbl(エドブラック)のプロデュースで作られた「Strange Leaf」のリリースが話題になったが、それ以前にもシンガポールのトラックメイカー・evanturetime(エヴァンチャータイム)や、ロンドンのジャズ/エレクトロニック・シーンで活躍するPastel(パステル)にリミックスを依頼するなど、その音楽性から想像される通り、aint lindyの活動は柔軟にして軽やかだ。

2024年3月6日にリリースされた「APOLLO feat. 桃子A1J」も、そうした彼の積極性から生まれた作品である。台湾出身のラッパー/シンガーである桃子A1Jをフィーチャーし、歌詞は英語、北京語、日本語を折り合わせて制作。シンセサイザーの音色が印象的なローファイ・サウンドに乗せて、新しい場所へと飛び出すことで得られる喜びを歌った曲である。

今回の取材がaint lindyとしては初めてのインタビューだという。バンド活動とほぼ並行してスタートしたソロプロジェクトの動機から、新曲「APOLLO feat. 桃子A1J」の制作背景までを語ってもらった。

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さらに、音楽メディアも運営しており、BIG UP!スタッフによるプレイリスト配信、インタビュー、レビューなどアーティストの魅力を広く紹介している。

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アンディ・ウォーホルから名前を取ったソロプロジェクト

ーaint lindyというアーティスト名の由来はなんですか?

アンディ・ウォーホルがめっちゃ好きで。

ーそれでアー写もあのテイストなんですね。

そうです(笑)。彼の本名はアンドリュー・ウォーホラといって、言わばアンディ・ウォーホルという名前は彼の虚像というか、アンディ・ウォーホルという存在は半分幻想みたいなところがあるんですけど。aint lindyは自分のアウトプットの場所、Aoki Rinという人間の自伝みたいなポジションにしたいと思ってて。それでリスペクトしてるアンディ・ウォーホルから名前を取って、アンディとリンをくっつけてlindyにしたんですけど、「虚像」ではなく「自分自身の表現の場」という意味では(アンディ・ウォーホルと自分は)全然違うから。否定形のaintを入れてaint lindyにしました。

ーこのプロジェクトを始めたのが2022年とのことですね。

Billyrromを始めて1年経たない頃から一応ソロで曲は作ってて、マジでよくわかんないミックスで出してたりはしたんですけど、自分の中で納得のいく形でリリースし始めたのが2022年って感じでした。作品を作るのが好きで1日中音楽をやっていたいし、曲はいっぱいできてくるんですけど、Billyrromは6人の色があるバンドだから、自分の色100%で作った曲はどうしようかなと思ったんですよね。なので最初は自分の作った曲を出してあげる場所として、ソロの活動が始まったという感じでした。

ーバンドの曲とソロ曲、制作中はどこに違いを感じて分けていくんですか。

ラップが乗るような曲にするのか、歌が乗るような曲にするのかは早い段階で決めないといけないから、サビとかイントロだけを作った段階で決めてしまうんですけど。なんというか、自分の心情や状況が、結構サウンドに反映されるときがあるんですよね。ポジティブなマインドとネガティブなマインドのときではサウンドにも雲泥の差があるし、100%自分の言葉を書かないと、このサウンドに説得力を持てないなと思うときがあって。その音と言葉がちゃんと融合しないといい曲にならない、と思ったものをソロで出してます。

ー作曲や作詞で意識していることはありますか?

やっぱり曲の雰囲気が決まるので、自分はコード進行を大事にしています。普段音楽を聴いているときも、今のポイントいいなと思うところがあったら覚えておいて、そこから模索していったり、コード進行だけ抽出してその雰囲気で曲を作ってみたりすることはありますね。

ーなるほど。

言葉は書こうと思わないと書けないというか、よく「生活の中で言葉が浮かんできて」というような人もいますけど、自分はそれが全然ないんですよね。なのでパソコンの前に座って、どういう曲にしようか考えていくうちに浮かんでくるというか。逆に言うとやり始めたら速いので、そこでラップのメロディも同時に考えます。

ーBillyrromで書いている歌詞も含めて、Rinさんのリリックには時折、時代の空気を感じるときがあります。

そうですね。何かを伝えたいという曲も確かにあるんですけど、別に何を伝えるわけでもなく、「俺が生きてる時代はこうでした」というのを書く曲があってもいいなと思います。たとえば「Campbeller」という曲は、自分が曲作りを始めたコロナ禍の時期、言ったら音楽を始めるきっかけにもなった世界の状況を書いておきたいと思って作った曲でした。そういう意味でもaint lindyは、自分の中では自伝や日記のようなポジションなのかなと思います。

ーライブはどんなふうにやっていますか。

今はサポートのベース、ドラム、鍵盤、ギターを入れた5人でやってます。自分がライブハウスのスタッフをやっているので、そこで出会って声をかけたメンバーもいますし、Billyrromで対バンしていいなと思ったヤツとか、鍵盤はLeno(Billyrrom/Syn.)にやってもらっています。今後はわからないですけど、今は同期もサンプリング・パッドも一切使わず全部生でやっていて、楽器を使ったライブは大事にしてますね。

ーそれは何か理由があるんですか?

やっぱりバンドから入っちゃってるんで、親しみもあるしやりやすいんですよね。あと、DJセットだとこっちがアレンジを変えない限りトラックはそんなに変化がないと思うんですけど、バンドはその日によって全然違うから。それがシンプルに楽しいです。

ロンドン帰りで急遽台湾に。軽やかなフットワークが生んだ新曲

ーソロで曲を制作していく中で、改めてどんな音楽から影響を受けていると思いますか?

RIP SLYMEが好きなので、ラップをやりたいなっていうのはずっとありました。自分がブラック・ミュージックをちゃんと聴くようになったのはバンドを始めてからなので、その前は割と日本の音楽を聴いていたんですよね。たとえばMr.Childrenも好きだし、槇原敬之さんや平井堅さんも聴いていました。あと、BIGBANG(ビッグバン)などのK-POPもめっちゃ好きです。なので歌に着目して聴いてた時間がすごく長かったと思うし、ソロのほうはブラック・ミュージックが根源にあるわけではないかな、という感じはしています。

ー時折アシッドジャズからの影響を感じるギターフレーズがあるように思いました。

そこは割とバンドと共通してる部分ではあるかなと思います。Jamiroquai(ジャミロクワイ)とかIncognito(インコグニート)とか、音楽を始めたときに聴いていたものはやっぱり反映されているのかな。

ー2023年の11月にはedblをプロデューサーに迎えた「Strange Leaf」をリリースしています。どんなふうに制作は進んでいったんですか?

最初に「The Way Things Were」という一番好きなedblの曲を共有して、こういうのをやりたいっていうのを伝えました。それから一緒にリズムを組んで、自分は英語が喋れないので四つ打ちにしたいときは手で叩いたりして(笑)。もう少しスペースを広げてほしいとお願いもしつつ、その場で適当にラップを入れていった感じです。そこでめっちゃ思ったのが、言葉が拙いからこそお互いに出てくるフレーズがすごく感覚的なんですよね。たぶんedblも好きなものや得意なものを出してきて、純粋に好きなものが混ざってできた感じはしました。

ーそして新曲の「APOLLO feat. 桃子A1J」です。桃子A1Jとは昨年台湾で出会ったということですね。

edblに「Strange Leaf」のプロデュースをしてもらう前に、「Time Inn Moder」のリミックスをPastelさんにやってもらっていて、その2人(edblとPastel)に会うためにロンドンに行く機会があったんです。そのときにちょうどA1Jの曲を紹介してもらって、すごく声がいいし、自分の曲を女性のシンガーが歌ったらどうなるんだろうっていうのも思ってたから、ロンドンに行った帰りに時間を作って台湾に寄りました。

ーそこでどんな曲にしたいか話してきたんですね?

いや、そのときはそこまで話さなかったです。一緒にやるかどうかも決定してない状況で、作っていた音源を事前に投げていたんですけど、会ったときに曲の感想を聞いたり、普段自分がどんな活動をしているかという自己紹介的なことを話しました。意気投合するかどうか、という感じの会でしたね。

ーライブのサポートメンバーの話にも通ずるところがありますね。まず人間的に合うかどうかを確かめるというか。

それは結構大事にしてます。やっぱ出ると思うんですよ、サウンドに。edblと一緒にやるときも、その前に1回会いに行こうと思ったし、やっぱり相手がいいと思っている部分と自分がいいと思ってる部分を共有してから、できたものをリリースしたいです。

日常の小さいことを変えるだけで180度違う世界に行ける

ー「APOLLO feat. 桃子A1J」の制作はどのように進んでいきましたか?

最初に大枠のテーマだけ共有して、それからコーラスのイメージやA1Jに歌ってもらいたい部分を伝えて歌詞をはめてもらいました。そこからはデータで共有しながら作っていった感じですね。

ーリリックは英語、北京語、日本語を織り交ぜたものになっていますね。

この曲は“新しい出会い”がテーマなので、やっぱり曲にも新しい要素を入れたい気持ちがありました。「APOLLO」自体が聴く人にとって新しい出会いになってほしいという思いもあったし、それで面白いことをしたいなと思って3ヶ国語を入れています。

ー歌のメインはRinさんよりも、桃子A1Jさんが担っているような曲だと思います。

間違いないです(笑)。一緒にやるからにはちゃんと歌ってほしいと思っていました。あと、トラックに関して言えば、この曲はプロデュースの意識が割と強くありましたね。

ーソロ曲でありながら、プロデュース曲に近いということですか?

ソロのプロジェクトでは可動域を広げたいんですよね。プロデュースやリミックスもやってみたいし、もちろんプロデュースされてみたい。いろんなことをやってみたくて、今回の「APOLLO」はその第一歩みたいな気がしてます。自分が好きなTyler, The Creator(タイラー・ザ・クリエイター)も、最初はOdd Future(オッド・フューチャー)というヒップホップ・グループのリーダーをやって、それからソロでも活動をしながらプロデュース的なこともやりつつ「GOLF WANG」っていうブランドもやっているから。そういうところから影響を受けてるかもしれないです。

ーサウンドとしては、「APOLLO」はこれまでよりもシンセの音が全面に出ているように思います。

結構上モノは直感でつけていきましたね。「APOLLO」は最初にビートを作ったんですけど、その音色がごつい感じではなかったから、そこにハマる音色を探していったというか。シンセの音に関しては、割と自分の中では「結果的にこうなった」という感覚が強いです。

ー後半のギターソロも印象的です。

最初はシンセリードを入れてたんですよ。でも、なんか足んないなと思って。それでギターソロを入れようと思ったんですけど、そのときめっちゃフュージョンにハマってて、松原正樹さんというギタリストの動画をめっちゃ見てたんですよね。それでたぶんフュージョンっぽいギターソロを入れたいと思い、ああなりました(笑)。

ーなるほど。《何か手放す必要はないんです。探して、小さなDoor》という歌詞が、特に耳に残ります。

去年ロンドンに行ったあと、実は台湾に行く前にフランスにも寄っていたんですけど、そこで文化的な面ですごく衝撃を受けたんですよね。というか、歩いているときに上を見てみたり、たぶん自分の意識的にもそれを探そうとしてんだろうなって感じはあって。

ー海外の土地で、新しい発見や気づきを求めていたと。

でも、海外に行って衝撃を受けたからこそ、日本でも同じことができるんじゃないかなと思ったんです。日常の中の小さなものを細かく見ていったら、きっと新たな出会いってめちゃくちゃあるんだろうなって。そうやってどこかに行ったとか、何かをしたから出会いがあったわけじゃないんだと気づいたときに、(新しい出会いのために)何かを手放す必要はないし、日常の中にも小さいドアがたくさんあるんだろうなと思いました。

ー変化していくことや新しい発見をしていくことは、Rinさんの人生観みたいなところがあるんですか?

自分は音楽を始めて人生が180度変わったから。人やものとの出会いって本当に人生を大きく変えるし、何かをやろうとしたら意外と簡単にできてしまうと思うんです。でも、たぶん音楽を始める前までは、(新しい挑戦をすることが)簡単なことだとは考えてなかったんですよ。何かを大きく変えるのはすごく難しいことだと思っていたはずだから。でも、音楽に出会って自分の人生がバーっと変わった瞬間があって、それは割と些細なことでもあったから、日常の小さいことを変えていくだけで180度違う世界に行けるということを書きたかったんですよね。

ーそれで《昨日と比べて、何色になった?》というリリックに繋がっていくんですね。ちなみに最初にもロケットが発射される音が入ってますが、何故タイトルをアポロにしたんですか?

イントロとCメロのところに入れた声は、アポロ18号の音声をサンプリングしています。あの頃は月に行くのが革命的なことだったと思うんですけど、やっぱり時代の進歩ってすごくて。今生まれた人にとっては、月に行くのがめっちゃ難しいことだって感覚はたぶんあまりないと思うんですよね。そうやって新しい出会いもどんどん当たり前の日常になっていくのかなって、サウンドを作っているときにふと浮かんできて、それで「APOLLO」にしました。

ー最後にaint lindyの活動で、今後やってみたいことがあれば聞かせてください。

ライブはもっと大きいところでやっていきたいです。今はボーカルだけやっているけど、ライブは自分の表現ができる場所なので、たぶん他の楽器をやっていく場面もあるだろうし。楽曲に関してもコラボやフィーチャリング、プロデュースなどもたくさんやっていくと思います。本当に自分でもこれからが楽しみですね。

RELEASE INFORMATION

aint lindy New Single「APOLLO feat. 桃子A1J」

2024年3月6日リリース
Label : FUKINOTO

▼各種ストリーミングURL
https://aintlindy.lnk.to/APOLLO

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aint lindy(エイント・リンディ)

東京を拠点に活動する6人組・Billyrromのギタリスト、Rin Aokiのソロプロジェクトとして2022年に始動。作詞作曲をはじめ、ラップやトラックメイク、ギター、クリエイティブディレクションまでを自身で行う。

2023年には、サウスロンドンシーンで活躍するアーティスト・edblをプロデューサーに迎えた楽曲「Strange Leaf」をリリースしているほか、FKJのサポートも務めるPastelによるリミックス作品「Time Inn Moder - Pastel Remix」を発表。さらに2024年3月には、台湾・台北出身の桃子A1Jを客演に迎えた楽曲「APOLLO feat. 桃子A1J」をリリースするなど、海外アーティストとのコラボも精力的に行っている。
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