“Altanative J-POP”掲げるCANDYGIRL。その独創的なクリエイティブの源に迫る|BIG UP! Stars #60

BIG UP! Stars

文: 保坂隆純  編:Mao Oya 

DIGLE MAGAZINEが音楽配信代行サービスをはじめ様々な形でアーティストをサポートしている『BIG UP!』を利用している注目アーティストをピックアップして紹介するインタビュー企画。第60回目はCANDYGIRLが登場。

ボーカル・ferrryとプロデューサー・Detchからなるユニット、CANDYGIRLが1stアルバム『How is the ALt Universe?』を6月30日にリリースした。

2020年、コンスタントに作品を発表し、数々のプレイリストにピックアップ。また、惜しくも中止となってしまったが都市型フェス『SYNCHRONICITY』にもラインナップするなど、その情報量の少なさに反してジワジワと認知と支持を拡大させてきたCANDYGIRL。

今回はそんなミステリアスな2人組にインタビューを敢行。結成の経緯からそのオリジナリティ溢れる音楽性、創作活動におけるスタンスに迫ることに。

ふたりのルーツ、音大での出会い

――おふたりの音楽的ルーツについて教えて下さい。最初に意識して聴いた音楽や、楽器を始めたきっかけなど。

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Detch:

僕の場合、ターニング・ポイントは2つあると思っていて。ひとつは小学生のときに観た『ドラムライン』(2002​)という映画。そのなかで流れていたEarth, Wind & Fire(アース・ウィンド・アンド・ファイアー)のベスト盤を父から借りて聴くようになって、自分もドラムをやりたいと思うようになりました。そこから時を経て、中学生になってからFoo Fighters(フー・ファイターズ)の「The Pretender」のMVをたまたま衛星放送か何かで観て、海外のオルタナ〜グランジなどを聴くようになりました。ベースを始めたきっかけは中学生のときに行った音楽教室で。そこで教えてくれた講師の方がめちゃくちゃ上手くて魅了されたんです。それから高校ではいくつかバンドを組んで、大学も音楽系のところに行って、ベースを専攻しました。

――Detchさんは以前、AUSTINESというバンドでも活動されていたようですね。

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Detch:

はい。AUSTINESは5人中4人が同じ大学に通っていた友だちで。ferrryと出会うきっかけを作ってくれたのも、そのバンドのギタリストでした。結局、僕は音楽性の違いなどを理由に抜けてしまい、それからCANDYGIRLとしての活動に本腰を入れたという形です。

――では、ferrryさんのルーツは?

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ferrry:

5歳くらいからピアノを習っていて、中学は吹奏楽部でトロンボーンを、高校は弦楽合奏部でチェロを弾いていました。高校まではずっとクラシックを勉強していたので、大学では異なるジャンルに挑戦したいなと思い、ボーカル志望でDetchと同じ音大に入ることにしました。大学に入ってからはポップスやジャズなど、これまであまり触れてこなかった音楽についても学びました。

――それまで、クラシック以外にはどのような音楽を聴いていましたか?

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ferrry:

アニメやゲーム、映画などの音楽に惹かれることが多かったです。それは今の作詞のスタイルにも活きていると思います。ゲームの音楽を演奏するコンサートにも何度か行っていて。ゲーム・タイトルで言えば『ドラゴンクエスト』や『ゼルダの伝説』、『勇者のくせになまいきだ。』など。

――先ほど少し触れましたが、おふたりの出会いについても教えてもらえますか?

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Detch:

ふたりとも同じ大学に通っていたのですが、グループで楽曲制作を行う授業があり、その際に先述のギタリストが連れてきたのがferrryだったんです。それ以降は学祭や授業で時々一緒に組む程度の関係だったんですけど、卒業間近くらいのタイミングから本格的に活動をスタートさせたという感じです。CANDYGIRLという名前も、元々は学祭に出るために決めたもので、New Edition(ニュー・エディション/Bobby Brownが在籍していたR&Bグループ)の曲名に由来しています。

――初めて組んだときはどのような音楽を?

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Detch:

バンド編成で演奏することを想定していたこともあって、今よりもバンド・サウンド寄りだったと思います。振り返ってみると、時期的にシティポップ再評価の流れがくる直前くらいのタイミングだったので、そういったテイスト、雰囲気もあったように思います。
インタビュイー画像

ferrry:

でも、当時からDetchの色は強く出ていたと思いますね。

――そこから2人組として今のスタイルに固まるまでにはどのような経緯が?

インタビュイー画像

Detch:

他に組む人がいなかったんですよね。
インタビュイー画像

ferrry:

私がコミュ障ということもあり、多くても3人までがいいっていう話はしていて。

――CANDYGIRLとしての方向性が見えてきたタイミングというのは?

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Detch:

2018年に発表した「N°5」ができたときは、ある程度自分たちに合っているスタイルが見えたような気がしました。ふたりで色々な音楽を共有していくなかで、一番しっくりきたのが韓国のR&Bやヒップホップで。彼らのトラップやハウス、フューチャー・ベースといったさまざまなジャンルを組み合わせる折衷的なスタイルは、自分たちがやりたかったことともすごくリンクしていたんです。特にSSWのHeize(ヘイズ)の作品は参考にさせてもらいました。ただ、今は自分たちの方向性や音楽性を固めるのではなく、その時々で自分たちが好きなことをやる、行きたい方向へ行くっていう柔軟なスタイルを目指して活動しています。

異色の組み合わせで生まれる刺激的なクリエイティブ

――2019年頃に本格始動し、昨年1月には1st EP『You』、9月には2nd EP『Morpho』を発表しました。前者は配信に加えフリー・ダウンロードという形でも配布されましたが、反響などはいかがでしたか?

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Detch:

フリー・ダウンロードにしたのは、単純により多くの人に聴いてもらいたかったからで、たくさんの人に興味を持ってもらえたらいいなという感じでした。
インタビュイー画像

ferrry:

みんなに聴いてほしいし、広がってくれたらいいなって思っていました。
インタビュイー画像

Detch:

実際にあの作品は僕らのターニング・ポイントになったと思います。今お手伝いしてもらっているレーベルさんからも声を掛けてもらえましたし。

――『Morpho』は“テクノロジーと自然の融合”を掲げたコンセプチュアルな作品ですが、そういったテーマはどのようにして生まれたのでしょうか?

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Detch:

当時観に行ったとある展示にめちゃくちゃ感銘を受けて。そこで得たインスピレーションを自分たちの作品に反映させたいという思いから生まれました。それ以前は1曲単位でしか考えていなかったのですが、作品を通して大きなテーマを描くという作り方が自分たちに合っているということにも気づけました。
インタビュイー画像

ferrry:

リリックも作品全体の大きなテーマに沿いつつ、曲ごとに自分で物語を紡いでいるような感覚で、作っていて楽しかったのを覚えています。私は元々ゲームや映画のBGM、サントラが好きなこともあって、自分たちの作品もそういう感覚で楽しんでもらいたいなっていう気持ちがあります。

――『Morpho』ではアーティスト・ビジュアルからカバー・アートワーク、オフィシャル・オーディオの映像まで一環とした視覚面での作り込みも印象的でした。

インタビュイー画像

Detch:

ビジュアル面は求愛行動さん(求愛行動/yui)にお願いして、とにかくカッコいいものを作ってもらいました。元々僕らの「You」のMVを撮ってくれた須藤さん(KYURIMAN/須藤しぐま)が求愛行動さんと一緒に仕事をしていたので、彼に紹介してもらって。オフィシャル・オーディオについては、たまたま彼が撮影していた素材があったので、それを後から頂いて制作しました。

――先日リリースされた1stアルバム『How is the ALt Universe?』もコンセプチュアルな作品となっているようですが、作品全体のテーマ、コンセプトはどのように浮かんできたのでしょうか。

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Detch:

一言で表現するのは難しいのですが、近代ヨーロッパのルネサンス絵画のような質感や雰囲気と宇宙的な世界観を合わせたものを作りたいと思ったんです。最初に作っていた曲がなんとなくルネサンス絵画のような雰囲気に合うことに気づいて。しばらくはそれをテーマに制作してみたのですが、段々とそれだけではつまらないなと思うようになり、そこでたまたま浮かんできた宇宙をテーマに加えることにしました。そのときになぜ宇宙が出てきたのかはちょっと思い出せないのですが。

――前作の“テクノロジーと自然の融合”にしろ、今作の“ルネサンス絵画と宇宙”しかり、通常であれば相容れない要素の掛け合わせですよね。そういった考え方は、CANDYGIRLのサウンド面にも繋がっていると思いますか?

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Detch:

意識してるわけではないのですが、自分たちにとっておもしろい作品を作ろうとすると自然とそういった考えに至るのかも知れません。音楽でも、例えば純然たるトラップを作るのは僕らがやるべきことではないなと思いますし。

バラバラなサウンドの中に見出す共通点

――では、今作の制作プロセスについて教えて下さい。

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Detch:

日頃聴いている音楽の中から、「このテンポ感いいな」とか「このビートすごいな」っていうのを溜めているんです。そういったものも含めて、アルバムに合いそうな楽曲を大量に集めたプレイリストを作って。それを聴いていると、ジャンルなどはバラバラでも共通点が見えてくるんです。そういった要素を抽出して、自分たちの楽曲に取り込んでいきました。

――プレイリストから抽出した共通点について教えてもらいたいのですが、言語化するのは難しそうですね。

インタビュイー画像

Detch:

そうなんですよね。ferrryにも伝えるのが大変でいつも苦労しています。
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ferrry:

たぶん職人的な思考なんですよね。何年、もしくは何十年かかけないと習得できない感覚なんじゃないかなって思っています。
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Detch:

他の人には伝わらないかも知れないんですけど、例えばトラップの曲なんだけど「めっちゃルネッサンスだわ……」って感じたり。ボヤッとしているので自分でも上手く説明できないのですが。

――今作はヒップホップからR&B、フューチャー・ベース、ハウスなどなど、さまざまな要素を感じさせる楽曲が収録されていますが、そういったジャンル感の振れ幅はあれど、そのどれもに共通するものがあると。

インタビュイー画像

Detch:

はい、そうですね。僕らのなかではしっかりと一本筋が通っている。

――特に「Burn The Witch」は最も異質というか、CANDYGIRLのこれまでの作品にはなかったファスト & ラウドな1曲になっています。

インタビュイー画像

Detch:

確かにあの曲は少し特殊で、狙って作ったのではなく、ギターを弾いていたら偶然生まれた曲なんです。制作途中で「この曲もアルバムに合うかも」って思って収録することになりました。

――Detchさんのトラックメイクにおけるルーティーンなどはありますか?

インタビュイー画像

Detch:

それもバラバラなんですよね。コードだったりキックやスネアの音色、サンプル音源だったり、最初に着手する部分も決まっていません。

――ferrryさんが作曲に加わるのはどの段階からなのでしょう?

インタビュイー画像

Detch:

僕がトラックをある程度組んでから、「こんな曲できたよ」って共有します。今作は何曲くらい作ったっけ?
インタビュイー画像

ferrry:

たぶん20曲近くあったと思う。
インタビュイー画像

Detch:

その候補トラックの中からアルバムに入れる曲をふたりで会議して決めました。最初から8曲くらいの作品にしたいというのは決めていたので、ある程度曲数を絞ってから、メロディを作り、ferrryに渡します。

――ferrryさんはどのようにしてリリックを書いていくのでしょうか。

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ferrry:

『Morpho』のときだったら、テクノロジーや自然にまつわる言葉をめっちゃ調べたり。作品全体のテーマや曲単位の物語に適した、それでいて語感のいい言葉をできるだけ取り入れて書いていきます。あと、日本語なんだけど日本語に聴こえないような発音であったり、言い回しなども意識しています。韓国語や英語の曲を聴いているときの、意味はわからないけど発音、語感が気持ちいいという感覚、それを自分の曲でも表現できたらなと考えていて。

――個人的には散文詩的な書き方なのかなと思ったのですが、物語やメッセージ性についてはどのような意識で書いていますか?

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ferrry:

自分のなかでは曲ごとにしっかりと内容も考えているつもりなのですが、聴いてくれた方がそれぞれ自由に受け取ってくれればなと思っています。中にはシンプルなことを言っている曲もあるのですが、詳細に説明することはしたくなくて。

今作で言うと、収録曲のオフィシャル・オーディオに英語訳が記載されているので、そちらを読んでもらった方がわかりやすいかもしれません。ただ、正解はないので、みなさんそれぞれの正解を見つけてほしいです。

――ラッパーのJuaさんを迎えた「Pluto」は日本語、英語、フランス語が入り交じる、まさに語感が気持ちいい曲ですよね。

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ferrry:

ラッパーの方に参加してもらいたいなと考えていたときにに、縁があって繋がったJuaさんにお声掛けしました。私たちが曲に込めた内容をPDFでお渡しして、Juaさんがそれを汲み取ったリリックを書いてくれました。

「“ポップ・ミュージックとは何か”をみんなで考えたい」

――CANDYGIRLは“Alternative J-POP”という言葉を掲げていますが、“ポップ・ミュージック”に対する姿勢、考えをお聞きしたいです。

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Detch:

その言葉自体は半分思い付きみたいな感じではあるのですが、“ポップ・ミュージックとは何か”をみんなで考えたいという気持ちはあります。僕らが鳴らしているサウンドが果たしてポップなのかそうじゃないのか。みなさんが好きに判断していいし、僕らも考え続ける。J-POPに対する反抗でもあるけど、決して外から批判しているのではなく、内側からの提言というか。

――従来のいわゆる“J-POP”に対して思うことは?

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Detch:

僕も昔は親しんでいましたし、嫌いとかではないんです。ただ、世界中のポップ・ミュージックを聴いていると、J-POPと括られるサウンドの幅は狭すぎるような気がしていて。「これもアリだよね?」っていう提案みたいなことができればいいなと。

――CANDYGIRLとしての今後の目標などはありますか?

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Detch:

大きなイベントに出演したいとか、何かを成し遂げたいというよりかは、とにかく自分たちがおもしろいと思ったクリエイティブをちゃんと実現できる環境を整えたいです。

――それは逆説的に、今の環境には決して満足していないということですよね。

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Detch:

そうですね。もちろん現状でできる限りの努力はしているつもりですが、満足はしていないです。
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ferrry:

「これがあったら……」とか「これができたら……」という悩みを全て解決したいですね。

――それだけ創作意欲は尽きないということですよね。

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Detch:

次の作品のこともすでに考えているのですが、最初の構想から現実的に実現可能なプランの間の差異を限りなくゼロにしたいんです。もちろんそこには自分たちの技術面だったり、金銭面、もしくはコロナ禍であることが関わってきたりすると思うんですけど。それこそ弦楽器を取り入れた曲であったり、ライブ・パフォーマンスなども実現したらおもしろそうだなと考えています。

――最初はバンドを想定していたとのことですが、2人組での活動スタイルについて何か思うことはありますか?

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Detch:

このふたりを中心に、客演であったりビジュアル面などで他の方にも参加してもらうっていう柔軟なスタイルは、個人的にもすごくしっくりきています。もうバンドには戻れそうにないですね(笑)。

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『DIG UP! – J-Indie -』

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