過去を超えて、愛を育む。kim taehoonが歌うポップソングに込めた想い

early Reflection
ポニーキャニオンとDIGLE MAGAZINEが新世代アーティストを発掘・サポートするプロジェクト『early Reflection』。12組目のアーティストに「kim taehoon」が登場。

“寄り道を楽しむ”というkim taehoonの生き方は、余裕のない社会に対する彼なりのアティテュードなのだろう。何よりこのゆる〜い音楽の根幹には、そうしたスタンスが確かに表れているように思う。リラックスを促すような柔らかい音色、思わず力の抜けてしまうだらっとしたテンポ、そしてキャッチーなメロディ…彼の人生観がこのポップソングの背骨になっていることは間違いない。

日本と韓国をルーツを持つkim taehoon、彼は今年3曲の楽曲をリリースしている。一発目は5月に発表した「DRIP DRIP DRIP feat.Gokou Kuyt」。ポップなサウンドの中にもエッジーな要素を感じるのは、いかにもふたりのセンスが溶け合った成果だろう。夏には彼が抱える問題意識が綴られた、「JAPAN AND KOREA」がリリースされている。シリアスなムードのバイオリンと切迫感を感じる歌は、まさしくこの曲のリリックがあってこそのもである。

そして先月リリースされたのが、韓国アーティストとのコラボを実現させた「Feel Like (feat. Motte)」である。「JAPAN AND KOREA」から一転、ラブリーな歌が印象的な、彼らしいチャーミングなポップソングになっている。が、サウンドから伝わるムードとは裏腹に、本人曰くこのふたつは「どちらも同じメッセージを込められた」楽曲であるという。今回のインタビューでは、下半期にリリースされた2曲の楽曲を中心に、kim taehoonの表現に込めた思いについて話を聞いてみた。彼が目指す風景は、きっと愛を持ってボーダーを越えていくこと。しがらみからそっと解き放ってくれるような、そんなポップソングである。

夢だった韓国のアーティストとのコラボ

ー2021年は「ナイスな心意気」をテーマに活動すると言われていましたね。

の「ナイスな心意気」の歌詞に、<へなちょこ人生 たまに投げたくなるけど 大好きな娘の 写真見ただけでバラ色の気分>というのがあるんです。そういったスタンスの取り方というか、あんまり思い悩むことなく、小さな幸せを見つけて行けたらいいなっていうのが今年のテーマでした。3作しかリリースはできなかったんですけど、それぞれ自分の納得のいくものになりましたし、自分が幸せになれるスタイルで活動できたという意味では、順調だったかなと思います。

ーどんなところに手応えや充実を感じていましたか。

たとえば「JAPAN AND KOREA」という、センシティブなタイトルに挑戦したこともそのひとつです。攻めすぎじゃない?とか、炎上するよってことも周りからは言われたんですけど、これはぼくがやることに意味のある曲なんだと、責任を持ってリリースできたのは良かったですね。

kimさんの身体が赤や緑のペンキで塗られていくMVを見た時、ふたつのカラーを持ちながら、それが混ざりあって新しい色になっていくようなメッセージを感じました。

おっしゃる通りですね。

ー歌詞を見てもシビアな現状認識が表現されていると思います。

ずっと心に溜めていた問題なので、どこかでちゃんと作品として昇華したい気持ちがありました。この前下北沢の<immix>で初めて披露したんですけど、企画した女の子も韓国と日本にルーツのある方で、自分の考え方に刺さったって言ってくれました。ぼくの思いの丈を、ど直球に書いたものが人に刺さることってあるんだなって、改めて実感しましたし、すごく嬉しかったです。

ーそして新曲の「Feel Like (feat. Motte)」ですが、こちらは一転してゆったりとした曲調が印象的なラブリーな楽曲です。

ラブリーですね(笑)。「JAPAN AND KOREA」が結構シビアに見られがちというか、あの曲のメッセージとしては、“呼び名に拘ることはないし、ピースで行こうよ”っていうことを歌った曲だったんですけど、ちょっと伝わりづらいところがあったかなと思ってて。「Feel Like (feat. Motte)」では、「JAPAN AND KOREA」と同じスタンスを、雰囲気を変えて表現してみようと思いました。

ー曲に込めているメッセージには通ずるものがあると。

実はそうなんです。曲の雰囲気って、きっと社会的な情勢から影響を受けている部分もあると思うんです。「JAPAN AND KOREA」を出した時って、皮肉ながらも世界的にアジアンヘイトがトレンド化していた時期で、そういう意味ではああいう表現が適切だったようにも思っていて。適切だったというか、そういう背景によってなるべくしてなったというか。今は自分の中でも少し落ち着いてきたので、ちょっと違う方面で表現をしてみようと書いた曲が「Feel Like (feat. Motte)」なのかな、と思います。

ーフィーチャリングには韓国のアーティスト、Motteさんを招いていますね。

かねてからの夢だった、韓国のアーティストとのコラボがこの曲で実現しました。

ー面識はあったんですか?

いや、それが全くなくて。ぼくが彼女の音楽を好きでDMを送ってみたんですけど、そこでは既読がつかなかったんです。でも、その後直接事務所にメールを送ってみたら快諾してくれて、今回曲を作りました。「Feel Like (feat. Motte)」はぼくが作詞・作曲・アレンジを行い、歌ってほしいパートを伝えて投げたんですけど、歌ってもらったら想像の2倍も3倍も良いものが返ってきて。ぼくからディレクションすることもなく、彼女自身の歌い節を尊重して録りました。

ーご自身の曲にMotteさんの声が合うと思ったのには、何か理由があったんですか?

彼女の声には独特のか細さがあり、気怠そうに歌うスタイルがいいなって思いました。kimとしてはポジティブに明るく歌うんだけど、ちょっとネガティブな部分を彼女の気怠さで表現することで、曲間のコントラストになるかもなって思ったんですよね。ラブを歌っている曲ではあるんですけど、どこかしらに誰しもが持っている影の部分を感じてもらえたら嬉しいです。

次ページ:愛を育むような関係を作っていきたい

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この記事を作った人

WRITER

黒田 隆太朗

平成元年生まれ、千葉県出身。ライター/編集。MUSICA編集部→DIGLE編集部。

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