Kitriが歌うポップな新境地。『Kitrist II』で踏み出した新しい表現とは

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文: 黒田隆太朗  写:山口こすも 

Kitriが2作目のフルアルバム、『Kitrist II』をリリース。表現の幅をグッと広げた新作を、MonaとHinaのふたりが語る

Kitriがポップスと正面から向き合った、最初の作品と言えるかもしれない。神秘の森に迷い込むような幻想的な音色が特徴的だったKitriだが、本作では「青い春」や「水とシンフォニア」といった、爽やかなポップソングが印象的である。また、リリックもどこか光の方へと向かっていくような意識があり、歌からも伸びやかな心持ちが感じられるだろう。Kitriらしい影のあるファンタジーを残したまま、これまでにはなかったストレートな表現を獲得したのが『Kitrist II』である。

さて、本作は自由にアイデアを試みたアルバムでもある。Kitri流ダンスミュージック「NEW ME」や、ラテンの情熱的なリズムを取り入れた「赤い月」。はたまた彼女達の演奏をカットアンドペーストするようにリアレンジされた「羅針鳥 (S.A.Rework)」や、アコギの柔らかい音色から始まるたまのカバー曲「パルテノン銀座通り」など、Kitriのクリエイティヴはまた一歩先に行っている印象だ。充実の作品を作り上げたMonaとHinaに話を聞いた。

天邪鬼な表現

ー今回のアルバムでグッと表現の幅が広がった印象を受けました。

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Mona:

1stアルバム(『Kitrist』)ではKitriの音楽ってなんなんだろう?って考えながら、手探りで作っていった曲が多いんですけど、今回は自由な発想で作れた気がします。Kitriのダークサイドの部分が出た曲もあれば、ポップな曲も入っていて、“これはKitriではやらないだろう”と囚われていた部分をほぐせたアルバムになっていると思います。
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Hina:

私は1stアルバムの時に初めて作詞をやったので、あの時はまず作ることを頑張る感じだったんですけど、今回は挑戦したいことを考えながらいろんな曲に参加しました。凄く楽しく作れましたね。

ーどの曲が最初に出来たんですか?

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Hina:

「人間プログラム」が初めに出来ました。

ー冒頭2曲(「未知階段」、「人間プログラム」)はミステリアスな雰囲気のある、これまでのKitriらしい楽曲ですね

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Mona:

もしかしたら今作へと向かう前から温めていた曲が、ダークサイドになっている気がします。曲順的には前半でガツンとKitriの毒の部分を聴いていただいて(笑)、そこから瑞々しく変化していくような構成にしました。最初はどうなるかわからない不穏なところもありながら、最後は安心できるようなアルバムができたら面白いと考えました。

ー人の影の部分を描く曲は、Kitriの音楽に通底しているテーマに思えます。

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Mona:

自分の置かれている環境を冷静に見ちゃう癖があり、客観的に自分を見ている内に段々とダークな部分が出てくるんですよね。たとえば当たり前にやっている集団行動について考え込んだり、そこにある風潮に自分は流されているんじゃないかとか、そんなことを考えてしまいます。そうした客観的な目線が歌詞になることがあって、2nd EP(『Secondo』)に入っている「目醒」という曲も、まさに“集団と個”をテーマに書いていました。

ー「未知階段」もそうしたニュアンスがある気がしますし、この曲は最後の一行がなければ暗い部分が色濃く出た楽曲になるのかなと思います。

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Mona:

作った段階では凄くトゲのある曲になっていて、私自身が困ってしまい1年ほど温めていていました。でも、それから自分が色々な経験をしていく中で、最後の一文は希望がないといけないと思うようになり、やっと出てきたのが<だから今日を 信じてみるよ>という歌詞です。

ー何故最後にそうしたフレーズが必要だと思ったんですか?

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Mona:

曲がそうさせていると言いますか、曲自身が未来に行きたがっているのを感じました。“先のことはどうなるかわからない”という意味で「未知階段」というタイトルをつけたんですけど、自分のことを信じられる前向きな曲を書きたいと思い、最後はそういうところに向かった気がします。

ー“シンギュラリティ”から着想を得たという「人間プログラム」は、デジタルな音と鍵盤の生音を共存させた不思議な感じの曲ですね。

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Mona:

無機質な感じを曲にしてみたいと思って作りました。歌詞は韻を踏んでリズムを作り出しているんですけど、私が書いた歌詞をHinaに渡したら、韻を踏んだ言葉になって返ってきたので、これはふたりだから出来た曲です。
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Hina:

Monaが作った土台となる歌詞を見て、どこをブラッシュアップしたらいいのか考えながら書きました。サビで<コンプリート>という言葉が繰り返されるので、その後に来る言葉を変えたら面白いんじゃないかと思い、歌詞の意味も考えつつ響きの良い言葉を綴っていきました。

ー鍵盤もリズミカルですよね。

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Mona:

そうなんです。鍵盤は踊っているのに歌詞は無表情で歌っているような、アンバランス感を意識しました。踊れそうなのに歌詞がそうさせないというか…そんな不思議なバランスの曲を書きたかったんですよね。

ー一貫してアンビバレンスなものを表現したい欲求がありますね。

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Hina:

Monaはそうですね(笑)。ピアノ連弾ボーカルユニットというのもMonaが考えたスタイルですし、人と違う何かを見つけたいって気持ちがあるのかなって思います。
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Mona:

ちょっと天邪鬼なところがあるかもしれないですね(笑)。予定調和にしたくないというか、流行りのものは使わないで、もう一捻りするぞって気持ちがあります。
次ページ:これまでやってこなかったポップス

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黒田 隆太朗

平成元年生まれ、千葉県出身。ライター/編集。MUSICA編集部→DIGLE編集部。

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山口こすも

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姉のMonaと妹のHinaによるピアノ連弾ボーカルユニット。 クラシックをベースに持ちながら実験的な音楽を創造し独自の存在感を放つアーティストとして、 2019 年1月、日本コロムビア BETTER DAYS レーベルより 1st EP「Primo」でメジャーデビュー。 同月、初のワンマンツアー「キトリの音楽会♯1」を開催。 7月には 2nd EP「Secondo」を発表し「キトリの音楽会♯2」の全国ツアーを開催。 2020年1月1st アルバム「Kitrist」を発表。ツアーは延期となったが、その間「Lily」、「人間プログラム」、 「赤い月」と、起伏に富んだ楽曲の 3 作連続配信やライブで観客を魅了しているカヴァー曲のアルバム 「Re:cover」を制作、また「Kitriのきとりごとらじお」(FM大阪)のレギュラー DJを7月から務め常に精力的 に世の中へ発信し続けた。 二度の延期を経たツアー「キトリの音楽会 #3 “木鳥と羊毛”」を2021年1~2 月に満を持して開催。 2月に先行シングル「未知階段」で、新たな表現の扉を開け、4月に2ndアルバム「Kitrist II」をリリース。 同月、α-STATION でのレギュラー番組「Kitristime」(キトリスタイム)もスタート。 6月には、Kitri初となる、Billboard Live 横浜と大阪でのライブを予定しており、 「Kitri & The Bremenz Live」と題し、神谷洵平(Dr.)、千葉広樹 (B.)、副田整歩 (Sax.) を迎えての初のバン ド編成で実施予定。
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