新たな表現フィールドで見せたTAEYOという人間の強さ

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文: Mai Kuno  写:Hide Watanabe 

メジャー1st EP『ORANGE』をリリースしたTAEYOにメジャーデビュー後の現状やEP制作、今後の展望まで話を聞いた。

弱さを見せながらも、決して弱い人間であるとは映っていない。そんな表現に彼の成熟を感じた。Taeyoung Boy改めTAEYO。もう“BOY”ではない。

7月15日にリリースされた彼のメジャー1st EP『ORANGE』は、メジャーというフィールドが今の彼の成長にとって必要な場所だということを証明する作品になった。今までいた居心地の良い場所から抜け出す勇気と、その選択は間違っていなかったと証明する実力。弱音を吐きながらも、そんな強さを持った人間なのだ。その強さの源は、彼の世界を広げてくれた音楽と仲間への人一倍深い愛情だと思う。

そんな彼ならば“売れている”という指標でばかり評価される日本のメジャーシーンを、表現のためのフィールドとして、駆け抜けていってくれるのではないだろうか。「俺が“なし”を“あり”にしていきたい。」以前、彼から聞いた言葉が強く印象に残っている。

では、彼自身メジャーデビューの現状をどう感じているのか。EP『ORANGE』の制作から今後の展望まで話を聞いた。

Taeyoung BoyからTAEYOへ

ー前回お話聞いたのは1stアルバム『HOWL OF YOUNGTIMZ』リリースのタイミングでしたよね。メジャーデビューおめでとうございます。

もう一年ぶりくらいですね。

ー名前はTAEYOとなりましたが、テヤンギャル(Taeyoung Boyのファン)という呼び方はそのままでいいですか?(笑)

それはいいと思います(笑)。

ー実際メジャーデビューの話はいつ頃から動いていたんですか?去年末に『THE BOY IS』を出したときに“Taeyoung Boyとして最後かも”とコメントしていましたよね。

あれを出す前ぐらいには決まってました。去年は色々な人がライブに来てくれてて、秋ぐらいからポニーキャニオンと段々話が進んでいったんです。

ー今回メジャーに行くと聞いて、驚きよりは“遂に”という感想でした。『HOWL OF YOUNGTIMZ』で凄く手ごたえを感じてたようだったので、順当なステップアップかなと。

うーん…。作品のクオリティとしては順当だと思います。アルバム出して、EP出して、次のステップとして、自分のやりたいことがたまたまこの形かなって。

でも、何枚売れたとか、どこに何人入れたとか、具体的な数字として結果を出してるわけじゃないんで、自分では順調とは思わないかも。

ー作品のクオリティを上げるために、次に踏むステップがメジャーのフィールドだったと。

自分の音楽的なステップアップですね。

ーTaeyoung Boy時代のアルバムやEPはコンセプチュアルな制作でしたよね。『THE BOY IS』はビジュアル面も凄かったし。

ぶっ飛んでましたよね(笑)。メインはトラップだけど色んなジャンルが入ってたし、曲だけじゃなく、ビジュアル的にもできる事は全部やっちゃおうと思ってたので。

そういう意味でやりつくしたというか。そのままの感じで作り続けることはできるんです。トラップベースの曲はいくらでも作れるから。でも、“インディのノリ”じゃないですけど、一回それはいいかなって思ったんで、環境を変えてみようと思いました。

ー実際に今メジャーにいってみて、変化を感じてる事はありますか?

一番変わったことは、関わる人数、自分をサポートしてくれている人数が増えたことですかね。期待されてる感があるから、頑張ろうって思えます。

ーデビューの話が進んでいた頃には現在のようなコロナ禍は予想もできなかったと思いますが、リリースまでに影響はありましたか。

イベントができないのはありますね。前回アルバムを出した時にやったリスニングパーティーはすごく楽しかったし、またそういうのやりたかったんですけど。ただ、それ以外で言うと自粛期間はずっとレコーディングをしてたので大きな影響はなかったです。メジャーデビューの発表も思い切ってできる状況ではなかったんですけど、その分制作は進みました。

ーEPリリースに先駆けて、まずは「Let me down」を先行リリースしましたね。

あそこで思ったより反応良かったんで、びっくりしました。賛否分かれると思ったんで。

ー“ポップになったな”みたいな?

そうそう。めっちゃ好きな人もいれば、今までTaeyoung Boyを聴いてたけど聴かないって人もいると思ったんですけど、意外とそうでもなくて。

ー意外のようで意外じゃない、絶妙な感じだったとも思います。Taeyoung Boy時代に作ってた楽曲と比べると違うかもしれないけど、TAEYO君と言う人間の人柄が出てるから納得できるような気がして。

そんな感じで受け取っていただけたら嬉しいですね。あの曲はレコーディングで悩んでたことを、そのまま歌詞にしてるんで。

EP『ORANGE』に込めたもの

ー今回リリースされたEP『ORANGE』は、これまでのような強い世界観から“夏”や“海”といった大きなテーマになりましたね。

そういう分かりやすいテーマでいこうと決めてたんです。

ー“Taeyoung Boy時代のような表現はしない”とか決めていましたか?

決めていたし、周りからも言われました。前と一緒の事を歌って、自分の事や身の周りのことを押し付けるような音楽をしてても売れないと思うし、自分のステップアップの意味でも、この機会にリスナーを意識して作ってみることにしたんです。

そのためにどうするかとなった時、まず歌詞を考え直しました。Chakiさん(Chaki Zulu)にも言われたんですけど、“共感できるリリック”、“弱い部分”というのは特に意識してます。今までみたいな強さを強調するのとは真逆の事ですよね。

ーだからといって、表現がガラッと変わったイメージでもないんですよね。

使ってる言葉はそんなに変わってないかもしれないです。言い回しが変わった感じですかね。

ーでも、「Let me down」を先行で聴いて“弱さ”にフォーカスしてるイメージだったので、一曲目「Intro」が結構トライバルな感じで「おや?っ」っとなりました(笑)。

めっちゃラップするじゃんっていう(笑)。そう思ってもらえたらめっちゃ嬉しいですね。逆に良い意味で裏切るところというか。
1曲目はトラックありきで、これをEPの一発目にしたいと思ったんです。そこに“これから始まるぞ”って感じでラップを乗せようと思いました。

ー2曲目からは心地良い曲が並びますね。

「Let me down」、「All I have」で気持ち良いほうに持っていくっていう。「All I have」みたいなブーンバップなバンドサウンドっぽい曲は、音楽を始めたての時に作ってた曲に近くて、割と自然に作れるんです。

ーMSN(Taeyoung Boy、KK、RICK NOVAによるラップユニット)の「Machikaze」を思い出しますね。

「All I have」はレコーディングの合間にたまたまできた曲で、元々入れようと思ってた曲じゃないんですよ。でも、その抜けた感じが逆に良かったんです。

ー4曲目「Calm」のサビは全部日本語で珍しいパターンでしたね。

これは初めてペンで紙に歌詞を書いて作ったんです。ギターだけの曲を作ろうとなった時にネイチャーな言葉をいっぱい書き出して、それを繋げていきました。

ー日本語でオーディエンスと一緒に歌えるものを意識したのかなとか思ってました。

それは意識してなかったかも。でも自然とそうなってますね。俺、カラオケで平井大とかRicky-Gを歌いたくなるんですよ。そういう感じで、カラオケで歌ってもらえたら嬉しいです。

ー5曲目「ORANGE」はMVも公開されましたね。

これは「NANIMOUE」も撮ってもらったレオくん(Leo Youlagi)にお願いしたんですけど、撮影の日にアシスタントでDroittteさんが来ました(笑)。レオくんが呼んでくれたみたいで、めちゃめちゃ活躍してましたよ。

ーそういえば、ずっと一緒にやってきたDroittteさんは今作の楽曲には関わってないんですね。

あの人はメジャー向けじゃないっす(笑)。だからアルバムを出すときにお願いしようと思ってます。冬くらいに出したいですね。

ー個人的には「ORANGE」が一番今のTAEYO君を表現してる感じがしました。

俺もそう思います。どうでしたか、「ORANGE」?

ーこれまで一緒にやってきた仲間たちに、今の自分の心境を伝えているのかなと思いました。「メジャーに行くけど…」というメッセージというか。実際寂しい気持ちはありましたか?

割と等身大な感じで、寂しくはなかったですよ。でも、周りの事は意識してたかもしれないです。「大丈夫かな」「どう思われるかな」って。意識してるがゆえに、ここまで書いたんだと思うし。

ーでも周囲はみんな喜んでいたんじゃないですか?

喜んでくれて、意外とみんな「凄い」って言ってくれてるんで嬉しいです。結局周りに一番聴いて欲しいのかもしれませんね。

ー前のインタビューで、「自分の周りの人に自慢できるミュージシャンになりたい」って話してくれたのがすごく印象的だったんです、ステップアップしたことで、さらにその気持ちは大きくなったんじゃないですか?

まさにそうで、今一番思ってます。その気持ちは全く変わらないですね。

新しい世界での挑戦

ーTaeyoung BoyとTAEYOの明確な違いって言葉で表現できますか?

うーん…なんだろうな。むずいっすね。

ー個人的には着てる服が違うくらいの感覚かなと。『Taeyoung Boy』と『TAEYO』という二つのブランドの洋服を持っていて、今は『TAEYO』の服を着てるという。

確かに。TAEYOは素っぽいけど、今言ってた“TAEYOやってる”みたいな感覚も悪い意味じゃなくあるんですよね…。

ー着ている人間は同じだから、以前とあまり違和感がないのかなと。ちなみに、実生活で最近のお気に入りのファッションはありますか?

最近は無地Tで良くなっちゃってます。夏になってからは身体が出来上がってきて、もう身体がファッションになってるっていう(笑)。

ーやっぱり鍛えてる人はそうなるんですね(笑)。

タトゥーも入ってて、身体鍛えてたら無地Tでいいよっていう(笑)。そいえば偶然ですけど、TAEYOって名前に変える時ぐらいから身体を鍛え始めましたね。飯も全然変わったし。

ー鍛え始めたのはなぜだったんですか?

たまに鍛えてはいたんですけど、本格的にやった事はなくて。ジム行き始めてから食事も意識するようになって、YouTubeや本で勉強してたら制限すること自体が楽しくなってきたんです。しかも人前に出る仕事だし…と思って。

ー音楽を始めた時みたいですね。

確かに。でも、めっちゃデカくはなりたくないんですよ!服が似合わなくなっちゃうんで、もうちょいくらいで止めときます(笑)。

ー(笑)。では、『ORANGE』がリリースされた流れで、やりたいことはありますか?

イベントできないから何とも言えないですよね。出来ればすぐにライブをやりたいんですけど、ちゃんと作りこんでからやりたい気持ちもあって。
だから曲を作り始めてます。レゲエやアフロっぽいものを作りたくて、チャレンジしてるところです。

ー他のアーティストとのコラボレーションは考えてますか?

色々と声をかけてもらっていて制作も進んでいるので、今年はリリーススピードを落とさずにバンバン出したいと思ってます。でも、声がかからない限りはラッパーとはやらないかもしれない。

ーそれはなぜでしょう?

最近一緒にやりたいなと思う奴があんまりいなくて。結構みんな似てきちゃってるんですよね。良い曲を作ろうと思えば作れるけど、似てることはやりたくないし。

ー母数も増えて、頭ひとつ抜けるのは難しくはなったかもしれないですね。

俺は何となく頭いい人が抜けていってる気がします。勉強できるとかじゃなくて、感覚的に。でも日本のシーンは面白いし、今すごい盛り上がってるとは思うんで、自分の色を突き詰めるためにも、みんながどんどんリリースしていって欲しいですね。

ー“TAEYO”として、新しく挑戦したいことはありますか?

ブランドはやりたいと思っています。ちゃんとブランディングして、デザインから販売までしっかり考えたいですね。そこには音楽をこじつけなくてもいいんですよ。俺のやりたいことだし。グッズではできないようなものを作りたいんです。トレーニングウェアやリラックスウェアがいいかなとは思ってます。今年中にできたらいいですね。あとは映画に出ることと、ラジオもやりたいかな。

ーメジャーの音楽シーンでやりたいことは?

今やってるアフロビートもそうだけど、人がやっていない事やJ-POPシーンになかったようなことを浸透させていく。メジャーではそういう新しいことをやりたいです。

ーこれまで活動してたアンダーグラウンドなシーンでは、ずっと変わらない場所で活動していく人も多かったと思うんです。

俺は違います。やりたいのは何億とかの世界ですね。でも、今回そこが制作するときの葛藤でした。まだクラブでやることを意識して作っちゃってて、最初はそれを振り切れなかったんです。そこの意識はこの制作の過程で変えていきました。

ーそれは“メジャーにいく”という選択をしたからこその成長ですよね。今、大きな会場を想定して音を作れる喜びはありますか?

そうですね。良い意味で振り切れるというか。早く野外や何万人の会場で「ORANGE」やりたいです。

INFORMATION

TAEYO 
Major 1st EP「ORANGE」

発売日:2020年7月15日
・品番:PCCA.04959
・価格:税抜1,500円
・形態:CD Only (6曲入り)
・収録曲 
 M1.Intro (Prod. BACHLOGIC)
 M2.Let me down (Prod. Chaki Zulu)
 M3.All I have (Prod. CELSIOR COUPE)
 M4.Calm (Prod. CELSIOR COUPE)
 M5.ORANGE (Prod. CELSIOR COUPE)
 M6.Alright (Prod. BACHLOGIC)

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この記事を作った人

WRITER

久野麻衣

DIGLE MAGAZINE 副編集長

PHOTOGRAPHER

Hide Watanabe

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