真夏にハマる愛と欲のグルーヴ。Rubber Popを掲げる江口侑のニューシングル「Dogman」

Review
ポニーキャニオンとDIGLE MAGAZINEが新世代アーティストを発掘・サポートするプロジェクト『early Reflection』より、今おすすめのアーティストをピックアップ!第45回目は江口侑をご紹介。

出会ったばかりのアーティストの全体像を知りたいとき、ホームページのブラウザを立ち上げるリスナーは最近どれぐらいいるのだろう。今回紹介する江口侑のクリエイティビティは作詞作曲や編曲はもちろん、MV制作に至り、加えてホームページ内には近況報告や新曲紹介を兼ねたラジオ番組風の音声データもセットされている。このメディア感は“クリエイティブアーティスト”を名乗るに相応しい。紹介の順番が逆になったが、江口は1998年生まれで神奈川県出身。子供の頃から音楽と芸術に触れ、東京藝術大学大学院在学中には、空間オーディオ/劇伴音楽の作編曲について研究していたそうだ。どんな形にも変化するRubber Pop(ラバーポップ)という形容を掲げており、パッと聴きはキャッチーなJポップのようでいて、さまざまなジャンルのサウンドを自由に取り込んだ多様な楽曲は彼のアート寄りの表現手法と王道な音楽趣味がかけ合わさった結果なのだろう。

ホーンがアンサンブルを彩る中で歌われる恋の耽溺

彼のこれまでの曲を一望してみると、2019年の「想套」ではMr.Childrenを彷彿する良質のメロディで、二人でいることの充足が自然の脅威や戦闘にすら打ち勝つと言わんばかりの強い愛が歌われている。また、アレンジ面での特徴であるストリングスが、より研ぎ澄まされ、ジャズやファンクのニュアンスのある曲を彩るようになった2022年の人気曲「桃源郷」、ピアノがいい味付けになっているアーバンなR&B調ナンバー「陽炎」など、どの曲もインディーズアーティストとしては驚くほどストリングスやピアノのアレンジにこなれた印象が漂うのだ。さすがに劇伴について学んだだけのことはある完成度だ。

そしてシングルとしては約1年ぶりとなる今回の「Dogman」ではストリングスではなく、ホーン隊をアンサンブルの重要な要素として取り入れているのが新たなチャレンジだと言えるだろう。まずファンキーなワウを効かせたギターカッティングがこれから始まる新生したストーリーを予感させ、ちょっとクセのあるオルガンサウンドもいい意味でねちっこさを演出。さらにホーンのアンサンブルがソウル/ファンク要素を盛り上げる。そんなオケの上で歌われるのはなかなかにエロティックな恋の耽溺。君という存在に飼い慣らされた自分を犬に喩えたところからタイトルが「Dogman」なのだろう。歌唱や声こそ素直なタイプだが、歌詞の発想に少しサザンオールスターズの真夏のラブソング的なものの影響を感じずにいられないのが、若いアーティストには珍しい。加えて、Dセクションでは白日夢のようにそれまでの躍動するグルーヴから、冷たいシンセベースが印象的な静かなジャズパートにガラッと空間が変わるのも面白い。

しかも毎回、自身がディレクションするMVもかなり本格的で、今回もDセクションの音像から思いついたという、夕方の砂浜に自分と舞妓が寝ていて、二人だけにスポットが当たっている映像を軸にしたMVを制作。音楽と映像が互いに影響し合って作品になっていくスタイルも江口が標榜するRubber Popの体現なのだろう。カテゴライズしにくいが、聴けばポップなクリエイターとして覚えておきたい。

INFORMATION

New Single『Dogman』

2024年6月12日(水)リリース
〈early Reflection〉

early Reflection

early Reflectionは、ポニーキャニオンが提供するPR型配信サービス。全世界に楽曲を配信するとともに、ストリーミングサービスのプレイリストへのサブミットや、ラジオ局への音源送付、WEBメディアへのニュースリリースなどのプロモーションもサポート。また、希望するアーティストには著作権の登録や管理も行います。
マンスリーピックアップに選出されたアーティストには、DIGLE MAGAZINEでのインタビューなど独自のプロモーションも実施しています。

▼Official site
https://earlyreflection.com

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江口侑(えぐち ゆう)

1998年2月27日生まれ、神奈川県出身。作詞作曲、編曲、MV制作までも自らがディレクションし、叙情性の高い歌詞と、ユーモラスな楽曲を生み出し続けている次世代型クリエイティブアーティスト。

幼少期から音楽と芸術に触れ、東京藝術大学大学院在学中には、空間オーディオ/劇伴音楽の作編曲について研究する。センチメンタルな優しさ溢れる中低音と、空気をすり抜けていくようなナチュラルなファルセットが特徴的である。どんな姿にも変形する新しいポップス音楽“Rubber Pop”(ラバーポップ)を掲げている。
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