大沢伸一(MONDO GROSSO)との長期セッションで言葉と歌を磨き上げたワタナベ・メイの新曲

Review
ポニーキャニオンとDIGLE MAGAZINEが新世代アーティストを発掘・サポートするプロジェクト『early Reflection』より、今おすすめのアーティストをピックアップ!第53回目は、ワタナベ・メイをご紹介。

シンガーソングライターのワタナベ・メイが、大沢伸一MONDO GROSSO)プロデュースによる新曲「彗星(Prod. Shinichi Osawa)」で覚醒した。自身で作詞作曲、GarageBandでのトラックメイキングを行い、これまでシングル「漂白」や「眩暈」、3曲入りEP『光』をリリース。これらの作品では、音像の近さがその制作手法とパッケージも相まって、彼女の魂から発される独白に素手で触れられるような興奮があったと思う。手作りのインディR&Bサウンド、ブルージーさと誠実さと切なさが同居する声、ネオソウルや現行のオルタナティヴなヒップホップと共振するフロウを持つメロディ、さらにJ-POPが内在させてきた歌謡のメロディ、そうした一見混ざらなさそうな特徴をワタナベ・メイという若者の個人史が接続させた音楽性が、強く印象に残るのだ。幼い頃から60年代アメリカのオールディーズや往年のソウルミュージックに触れ、中学・高校時代は日本のバンドシーンやJ-POPにも触れ、バンドも経験してきた彼女ならではの縦にも横にも広いバックボーンが生きている。

一音鳴った瞬間に沸き立つスケール。ワタナベの覚醒の一曲

iPhone一つで制作する手法は珍しくないが、ワタナベの作風はヴェイパーウェイヴやエレクトロスウィングではなく、基本はR&B/ヒップホップだ。作家としてトラックメイキングまで一人で完結させていくのか?と予想していたところに、今回の大沢とのタッグによる新曲のインフォメーションが入ってきた。しかもプロデュースのみならず、作曲も大沢の手によるものである。これは少し意外だったが、一音鳴った瞬間に総毛立つようなオケのスケールにワタナベの新しいステージを感じる。と、同時に、彼女がこれまでも描いてきた今とこれからの世界と自分の関係や、決して明るくはない未来への展望が音の感触や温度で立ち上がった。

ピアノの美しくも大胆なメロディとSF的な世界観があるオケの上で、ワタナベの表現力もこれまでと比較にならないほどレンジを広げている。リフレインされる《見えない見えない見えない》《言えない言えない言えない》のメロディの求心力、全編に渡るメロディの高低差が聴く者の心にいい緊張感を与え、純粋に何度も聴きたくなる斬新さを持っている。ここで彼女が書いた歌詞はこれまでの作品と精神的には通底しつつ、孤独感はサウンドスケープによって宇宙レベルまで拡張し、かと思えばセクションが変わると日々の悩みやセルフラブについてクローズアップしていく。気持ちの変化や認識する空間がアレンジによって変化すること、これこそまさに大沢との共作における最大の成果なんじゃないだろうか。ワタナベの音楽を気にかけてきた人にも、大沢の『何度でも新しく生まれる』以降のアルバム『Attune / Detune』『BIG WORLD』での多彩なボーカリストをフィーチャーした作品に感銘を受けた人にも、ぜひ聴いてほしい1曲だ。

RELEASE INFORMATION

New Single『彗星(Prod. Shinichi Osawa)』

2024年10月16日(水)リリース
〈RAINBOW ENTERTAINMENT〉

early Reflection

early Reflectionは、ポニーキャニオンが提供するPR型配信サービス。全世界に楽曲を配信するとともに、ストリーミングサービスのプレイリストへのサブミットや、ラジオ局への音源送付、WEBメディアへのニュースリリースなどのプロモーションもサポート。また、希望するアーティストには著作権の登録や管理も行います。
マンスリーピックアップに選出されたアーティストには、DIGLE MAGAZINEでのインタビューなど独自のプロモーションも実施しています。

▼Official site
https://earlyreflection.com

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ワタナベ・メイ

iPhoneで楽曲制作を行う20歳のシンガーソングライター。

R&B/ソウルをはじめ、インディポップや昭和歌謡など様々な音楽からの影響を受けて育つ。不登校をきっかけに中学生の頃から曲作りを始め、19歳でアーティストとしての活動を開始。現在は音楽活動の傍ら、大学でアートを専攻し、レコード店でアルバイトをしている。これまでに2曲のシングルと1作のEPを発表しており、今作「彗星(Prod. Shinichi Osawa)」は3作目のシングルとなる。
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