孤独な世界をなくしたい。Grace Aimiが創作に込める想い| Newave Japan #54

Newave Japan

文: 黒田隆太朗  写:遥南 碧  編:Mao Oya

DIGLE MAGAZINE編集部が今、ホットなアーティストをお届けするインタビュー企画『Newave Japan』。54回目はGrace Aimi。沖縄県出身、次代のシーンで活躍されることが期待される彼女が創作に込める想いを紐解く。

“誰もが気軽に来れる場所でありたい”、そして“幸せな世界を作りたい”、それがGrace Aimiのゴールだという。すなわち彼女にとって、クリエイティブとは交歓の象徴なのだろう。音楽を通し喜びを分かち合うこと、あるいは悲しみを癒し合うこと、そして互いを認め合うこと。情感豊かでフレンドリーな表現の根底にあるのは、居心地の良い場所で他者と繋がっていくピースフルな風景である。

沖縄出身、次代のシーンで活躍されることが期待される新鋭・Grace Aimi。昨年にファースト・シングル「Eternal Sunshine」をリリースすると、今年の2月にはYENTOWNChaki Zuluが総合プロデュースを手がけた楽曲、「Open」をリリース。同月に「My Eyes」を発表すると、翌月にもドリーミーな音色で自己の内面を綴った「True Feelings」をドロップ。〈Capitol Records〉とのパートナーシップもアナウンスされるなど、海外展開も視野に入れた活動で、じわじわとその存在感を強めている。

5月に入ってもそのペースは衰えず、14日に「Rainbow」をリリースすると、21日には初のEP『PICNIC』を発表。「Rainbow」はこれまでのイメージとは異なるダウナーな音が印象的な、ネガティブな感情も含め相手の全てを受け入れることを綴った1曲である。今回の取材では10曲のルーツ・プレイリストを用意してもらい、新曲の話と交えて、彼女の表現の根幹にある理想を語ってもらった。

沖縄を世界に広めたい

ーGraceさんのルーツをまとめたプレイリストをいただいての取材になります。弟さんと一緒に作られたそうですね?

プレイリストはふたりで車を運転しながら聴いて、1番気持ち良いプレイリストを作りました(笑)。姉と兄が3人いるんですけど、彼らが小学校に行っているあいだはいつも私と弟のふたりで過ごしていたので、本当に大親友のような関係です。

ープレイリストの中で一番古い記憶にある音楽はなんですか?

たぶんCarpenters(カーペンターズ)の「we’ve only just begun」ですね。お母さんがカーペンターズ好きなので、小さい時から流れていました。

ー家族でよく音楽をシェアするんですね。

そうですね。一人ひとり好きな音楽が違っていて、家族でドライブをするとロックが流れた後にレゲエが流れたり、レゲエの後にEDMのビートが流れたり、いつもいろんな音楽がかかります。私はJohnny Cash(ジャニー・キャッシュ)やElvis Presley(エルヴィス・プレスリー)のようなカントリーも好きですし、ジャズや沖縄感のあるアイランド系の音楽も好きです。

ーそうした多様な音楽性は、プレイリストにも表れています。

ジャンルに捉われないアーティストが好きです。たとえばChildish Gambino(チャイルディッシュ・ガンビーノ)はソウルな時もあれば、思いっきりラップの時もあって、彼の音楽は必ず入れないといけないなって思っていました。セレクトした「Redbone」は、高校1年の時に友達の車で初めて聴いた曲で、聴いた瞬間にこれはヤバいと思って速攻ダウンロードしました。

ー彼は音楽的な幅広さはもちろん、俳優やコメディアンとしての顔も持っている、まさしく多才なアーティストですね。

本当になんでもできるような人ですよね。私もそういう人になりたいです。自分が楽しいと思えるものを全部繋げれたら最高だし、枠にはまらず、自分の好きなクリエイティブはなんでもやりたいです。

ー音楽以外に、今一番興味があるものは?

絵が大好きです。小さい時から賞状をもらったり、学生の頃から美術の成績が良くて。音楽をやる前はアートスクールに行こうか迷っていたこともありました。

ーどこで絵画に興味を持ったんですか?

お父さんが小さい時に絵の書き方教えてくたので、お父さんのおかげですね。お母さんはめっちゃ音楽のセンスが良い人なので、私は両方の好きなところを引き継いでいる感じです(笑)。家族は小さい頃から仲が良く、どこかに遊びに行く時はいつも一緒でしたし、家族の一人ひとりから言葉で表せないようなインスパイアをもらっています。

Tyler, The Creator(タイラー・ザ・クリエイター)からはどんな影響を受けていますか。

音楽はもちろんキャラクターを好きになりました。彼のインタビューを見ると、自分自身のことを大事にする人で、そういうところにインスパイアーされています。

ーなるほど。

彼は世界観の強いアーティストだと思うんですけど、私も自分なりに工夫して、誰が聴いてもこれが“Graceの世界観だ”ってわかるような音楽を作りたいです。誰もが気軽に来れる場所を作れたらなと思います。

ー音楽の創作だけではなく、コミュニティやチームを作りたい?

作りたいですね。自分が沖縄出身だから言ってるだけかもしれないですけど…沖縄が世界一良い場所だと思っているんですよ(笑)。沖縄の海もご飯もカルチャーも大好きなので、その豊かさを世界に広げていきたいというか、沖縄バイブスを世界に広げてここを中心にコミュニティを作っていけたらなって思います。

ープレイリストも、沖縄出身のOZworldから始まりますね。

沖縄感を出したくて、頭に持ってきました(笑)。彼も自分のスペースを作りたいって言っていて、「My Planet」はそういう曲ができたから聴いてみてって言われて聴かせてもらった曲でした。

ー同じバイブスを共有している実感があるんですね?

レオ(OZworld)は仲の良い友達で、兄弟みたいだなって思います。一緒に曲を作った時も(「High up(feat. Grace Aimi & Marie Yasuko)」、「I’m happy(feat. Grace Aimi)」)ふたりのバイブスが高くて、スタジオに入ったら速攻曲ができましたし、レオとは人としてのゴールが一緒なんですよね。

ーゴール?

Awichやレオとは家族みたいな関係で、みんな生き方が違っても同じ場所を目指していると思います。幸せな世界を作っていこうってよく話していて、一人ひとり音楽性やその伝え方は違いますけど、その違う部分をお互いに支えあって、みんなでひとつの円になるというか。パズルのピースが合わさるように、一緒に幸せな世界を作っていけたらいいなって思います。

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