5人のカラフルな個性を繋ぐ「好き」というピュアな感情ーー大聖堂が描くグッドミュージックの魅力を紐解く

Interview

文: riko ito  写:Reina Tokonami  編:Miku Jimbo 

東京を拠点に活動するバンド・大聖堂が、2023年3月22日に2nd EP『大変身』を発表した。古き良き洋楽ポップスを彷彿とさせつつ、普遍的かつ現代的なサウンドを奏でた全5曲を収録。今回はメンバー5人にメールインタビューを実施し、本作の魅力やバンドのルーツなどに迫る。

懐かしい雰囲気を纏った朗らかな世界観と、現代のサウンドが同居する“グッドミュージック”を生み出し続けるバンド・大聖堂が、2023年3月22日に2nd EP『大変身』をリリースした。2020年にリリースされた1stアルバム『大作戦』、1st EP『夏の終わり』に続く本作は、収録曲5曲が次々に違う表情を見せるカラフルな作品だ。

大聖堂らしい温かみのあるサウンドが印象的な「花を買って帰ろう」や、グランドピアノの軽やかなサウンドからハードロックばりの大展開をみせる「雨傘」をはじめ、「自分たちが今一番録音したいものを録ろう」というピュアな感情のもとに制作した5曲を収録。メンバーがバラバラの個性やルーツを持ちつつも、緩やかに調和する大聖堂というバンドを体現したような作品になっている。

そんな彼らの音楽性の軸となっているのは、The Beatlesザ・ビートルズ)をはじめ、60年代ポップスが持つ懐かしさなのだという。大聖堂の音楽にいつの時代でも愛されるような普遍性を感じるのは、現代のポップスとしての新しさも感じつつ、誰もが心和むような要素が散りばめられているからなのかもしれない。

今回は、メンバー5人にメールインタビューを実施。メンバーのルーツや『大変身』の制作エピソード、リファレンスになった楽曲を伺いつつ、大聖堂が生み出す“グッドミュージック”の魅力を紐解いていく。

The Beatlesに感じる“覚えのない懐かしさ”が制作の軸

バンド結成のきっかけを教えてください。

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山本康博(Vo./Gt.):

高校の頃の同級生、それぞれの大学に入ってからの知り合いに声をかけてバンドを始めました。メンバーチェンジを経て、現在5人で活動しております。

ーみなさんのルーツとなったアーティストを教えてください。

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山本康博(Vo./Gt.):

Glenn Gouldグレン・グールド)です。
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中西和音(Dr.):

父の影響で幼少期からジャズが好きで、小曽根真さんの音楽は特に聴き込んでいました。
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尾花佑季(Key.):

小さい時からピアノを弾いていて、親の影響でブラジル音楽をたくさん聴いていました。バンドの中でピアノが輝いている!と初めて意識したのがaikoで、それからずっと大好きです。

ー大聖堂の楽曲からは年代を問わずさまざまなジャンルのエッセンスを感じますが、バンドの音楽性に影響を与えているアーティストはいますか? また、そのアーティストにシンパシーを感じている点は何でしょうか。

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山本康博(Vo./Gt.):

The Beatles(ザ・ビートルズ)や60年代ポップスを聴いた時に感じる覚えのない懐かしさが、曲を作る時の軸になってる気がします。魅力やシンパシーについて問われると、幼い頃から聴き続けていたから体に馴染んでいたのか、た〜またま相性バッチリだったのかわからなくなります。ハッピーな気分になる音楽が好きなのか、音楽を聴いてハッピーになりたいのか、卵ニワトリ問題にぶち当たります。
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尾花佑季(Key.):

あまりメンバーみんなが共通して好きなアーティストは思い浮かばないですが… みんなヤス(山本)の音楽が好きだから集まっているのかな。
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町野陽輝(Gt.):

結成時からそうだったのだけど、メンバーはいつも別々の音楽を聴いていますね。お互いが好きな曲をおすすめし合ったり、同じ曲にハマってる瞬間もあったりするけど、基本的にはそれぞれがその時にしっくりくる音楽を聴いている。特定のアーティストに根差していないこと、むしろこれが大聖堂の音楽性を特徴付けているのかもしれません。

ー「大聖堂」というバンド名は、アメリカの小説家レイモンド・カーヴァーの短編小説集の作品名に由来しているとのことでしたが、具体的にどういった想いを込めたのでしょうか?

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山本康博(Vo./Gt.):

今はバンドを去ってしまった元ドラムの方がたまたまその時に読んでいたからという理由で、驚くほど適当に決まった覚えがあります。真意やコンセプトは彼のみぞ知る、かもですね。漢字のバンド名は意外と少ないので、僕は気に入っております。今では「大〇〇」という単語を見つけたら報告するのがバンドの大事なコミュニケーションの一つになっていて、今ではもう100個くらいあるかも?という感じです!
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尾花佑季(Key.):

今はみんな気に入ってるんじゃないかなと思います。

ー大聖堂の楽曲は、流行り廃りに関係なく時代を問わず愛されるような普遍性を感じますが、そういった楽曲を作り上げるために大切にしていることはありますか?

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山本康博(Vo./Gt.):

メンバー間で言語化してるわけじゃないんですが、「歌のメロディが良いな!」っていうのは、なんとなく共通の認識として持ってそうな気がします。インストナンバーも作ってみたいですね。
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町野陽輝(Gt.):

ふと大聖堂の音源を聴いたりすると、「懐かしさと新しさの同居するグッドミュージックを奏でる」というプロフィールが妙に腑に落ちる時があります。マネージャーが書いてくれたこの紹介文を読むまで、実のところあんまりそんなふうには感じていなかったかも。僕たちの音楽がそういう良さを持っているのなら、それはやっぱりメンバーがみんな、ちゃんとヤスの曲を「好きだ」と思い続けているからだと思います。これは、「大切にしていること」と言うには大袈裟かもしれないけど、もっとも大切なことだと思う。

だからこそ、懐かしさも新しさも綯交ぜになった各々のメンバーの趣味が一つの音楽の内に同居できている。前の質問とも繋がることですけど、ヤスの紡ぐ言葉とメロディには、自然とルーツの異なるメンバーの個性を心地よくアッサンブラージュする、優しさみたいなものがあるんだと思います。だからお互い無理に音楽性を擦り合わせようとはしないし、新しい曲にはひとまず自分なりにアプローチしてみる。少なくともこの姿勢は全員共通しているんじゃないかなと思います。

リファレンスは吉田省念、Fountains Of Wayne、Laufey…カラフルな個性を凝縮したEP

ー普段の曲作りの工程を教えてください。

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山本康博(Vo./Gt.):

たくさんの歌詞になりそうな言葉を集めて、それらをその時思いついたメロディやアレンジに引っ張って形にしていって、一曲にしています。

ー最新EP『大変身』は制作する前から構想を練っていたのでしょうか?

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山本康博(Vo./Gt.):

EP制作前は、全体像や曲を通してのコンセプトや構想まではほぼほぼ考えてなかったです。それぞれの曲に、「この曲は買ったばかりの12弦ギター使うぞ〜」とか「60年代っぽい雰囲気にしたいなぁ」みたいなフワッとしたイメージはありました。この質問で、そういえば収録曲を決めてから録音するというやり方を今まで続けているな〜、って気付きました。
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尾花佑季(Key.):

本当はまったく別のコンセプトアルバムになるはずだったのですが、収録曲を決める時に難航してしまい「むずかしいことは考えず、自分たちがいま一番録音したいものを録ろう」ということで集まったのがこの5曲です。結果的に、数分ごとにパッパッパと別の映画の場面をみせられるようなEPになったかと思います。タイトル『大変身』の由来にもなりました。
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山本康博(Vo./Gt.):

ミックスが終わって、メンバーで集まって曲を並べて聴いている時に、「いろんな曲調があるね〜」とか「(それぞれの演奏が)違うバンドみたいだね〜」的な印象を話してたので、確か僕の提案でこのタイトルになった気がします。「大〇〇」というタイトルにしたいなと思ってたので、個人的には大満足でした!

歌詞を書く際には、どういった点を意識しているのでしょうか?

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山本康博(Vo./Gt.):

イメージが浮かんだ時に、良い歌詞ができる気がしてます。日常に溢れる(言葉にする前に反射的に湧き起こる)視覚的な面白さ、感覚的な可笑しさをフレッシュに感じられるように、よく食べてよく寝ることをなるべく実践しています。

ー今回のEPはさまざまな録音方法を用いたそうですが、アレンジやサウンド作りでこだわった点を教えてください。

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山本康博(Vo./Gt.):

ドラムの音色をそれぞれの曲に合わせて作り込んでもらったので、ミックスの際はドラムの音作りを中心としながら、曲の雰囲気を固めていきました。
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町野陽輝(Gt.):

音源としての音作りという点に絞ってお答えするなら、これまでの音源制作で学んだことが今回の録音でちゃんと応用できるようになってきたかなと思っています。たとえば、それこそ曲のイメージによって録音の仕方を変えてみたり。もちろん依然模索中ではあるのですが…。あとはミックス、マスタリングもすべて自分たちで相談しながら進めたのが、今回の新しい挑戦であり、新しいこだわりポイントでした。
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尾花佑季(Key.):

ハルキ(町野)が触れているように今回は初めてミックス、マスタリングを自分たちですることにしたので、録音の時点では到達できなかったところまでヤスがミックスで持っていってくれたのが、全体のサウンドの仕上がりに大きく影響しました。きれいにまとまってはいないかもしれませんが、「こういう音にしたい!」という思いはこれまでより一層、ダイレクトに乗せることができたと思います。

ーEP収録曲でお一人ずつ気に入っている曲を1曲挙げるとしたら、どの曲になるでしょうか?

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山本康博(Vo./Gt.):

「大ファンク」です。轟けギターソロ!
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中西和音(Dr.):

「大ファンク」ですかね。シンバルやドラムに布をかけてしっかりめにミュートすることで、無機質さと暖かみが同居した好きな感じの音が録れました。打ち込みドラム→生ドラムの境目フェチなのですが、そこもバッチリ決まった気がするので、注目して聴いてほしいです。
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尾花佑季(Key.):

「雨傘」ですね。(大聖堂の曲の中では)初めてグランドピアノで録音しました。かつてひとりでクラシックを弾いていたのとはまったく違う、バンドサウンドの中での演奏はとても気持ち良かったです。
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成瀬圭(Ba.):

「雨傘」。オールディーズっぽいけど、そのまま過ぎない絶妙な魅力があると思っています。
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町野陽輝(Gt.):

「歌になりたい」です。ある日間奏に大胆なアレンジが加わったんです。少し遅れてスタジオに行って合わせ始めたら、突然みんなが知らないフレーズを弾き始めたので最初は仰天でした。一番のサビのあと、注目してみてください!

ー本作の制作で何かこだわったポイントや新しく挑戦したことなどはありますか?

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山本康博(Vo./Gt.):

すべて曲調とキーが違います。EP制作前はそんなに意識してなかったのですが、すべて異なるイメージからメロディやアレンジの音楽的な着想を得られている気がします。また今作より取り入れた、打ち込み、サンプリング、トイピアノ、12弦ギターなどは、次回作にも繋げていきたい新しい試みです。

ー制作で苦労した点や、レコーディングでの印象深いエピソードはありますか?

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山本康博(Vo./Gt.):

ベースを二人で録り直したこと。アイディアを出し合いました。それで良くなった部分はあると思います。
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尾花佑季(Key.):

わたしの家でヤスとハルキと成瀬くんと集まって最後の録音を終えて、みんなで食べたほっかほっか亭の海苔弁Premiumがすごく美味しかった~。
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町野陽輝(Gt.):

海苔弁を食べる3〜4時間前、「大ファンク」のギターソロを考えていたのですが、なかなか良いアイディアが出なくて(前の日にファンクっぽく、ジャズっぽいソロを録っていたのですが、メンバーに堅実すぎるとボツにされました泣)。結果、半分ふざけながら弾いたイケイケのロック調のソロが好評で、そのまま採用になりました。タイトルとは裏腹に「ファンキーになれない」このギターソロ、今ではすっかりお気に入りです。

ーEP制作のリファレンスとなった楽曲や、バンドの今のムードを示す楽曲は何でしょうか。また、選んだ理由も教えてください。

Emitt Rhodes(エミット・ローズ)「She’s Such A Beauty」

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山本康博(Vo./Gt.):

収録曲に少々似てる曲。いや大分かもです。

Mild High Club(マイルド・ハイ・クラブ)「Undeniable」

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山本康博(Vo./Gt.):

リファレンスにしてた曲です。ライブでやった時に、新潟から東京まではるばるやってきたバンドにズバリ言い当てられて、それをきっかけに仲良くなれました。

吉田省念「中空のテラス」

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中西和音(Dr.):

伊藤大地さんの歌に寄り添うオーガニックなドラムが、バンドのドラマーとしての根本的な指針になっています。

Dawes(ドーズ)「Someone Else’s Cafe / Doomscroller Tries To Relax」

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中西和音(Dr.):

スケールの大きさと繊細さの共存。大聖堂で表現したいサウンドを実現しているバンドです。

Kate Bollinger(ケイト・ボリンジャー)「Who Am I But Someone」

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尾花佑季(Key.):

EPを作っていた2022年のあいだ、毎日これを聴きながら朝の支度をしていました。『大変身』もそんな日常にとけこむ一枚になれたら。

Fountains Of Wayne(ファウンテインズ・オブ・ウェイン)「Stacy’s Mom」

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成瀬圭(Ba.):

2曲とも、ロックをポップに楽しくやりたいムードな気がします。

スピッツ「スパイダー」

Zaz(ザーズ)「Comme ci, comme ça」

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町野陽輝(Gt.):

前から好きでよく聴いている曲。オブリガード(※註:メロディ・パートをより引き立たせるために、同時に演奏される別のメロディ)の雰囲気とかタイミングが自然で心地いいです。

Laufey(レイヴェイ)「Everything I Know About Love」

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町野陽輝(Gt.):

EPを作っていた頃によく聴いていました。「今夜すべてのBarで」の音色とかは、結構最近の曲を参考にしていました。

“大変身”はなくても、着実にバンドを続けていきたい

今年で結成5周年を迎えることになりますが、これまでの作品を経てバンドが“大変身”したと感じる部分はありますか?

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山本康博(Vo./Gt.):

大変身ではないかもですが、最近ライブでシンセサイザーを弾くようになりました。ゆくゆくはハーモニカ、ボンゴ、グロッケン、etc…いろんなところへ手を伸ばしていきたいです。
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尾花佑季(Key.):

大変身!というほどかっこよくは言えないですが、ここ最近の大聖堂はライブでの演奏がとても楽しくやれているような気がします。音源しか聴いたことがない方にも、ぜひ一度ライブに足を運んでみていただきたいです。

ー『大変身』のリリースパーティが2023年4月9日(日)に下北沢にて開催されますが、どんなライブにしたいですか? 意気込みや、来場するファンに期待してほしいことなどがあれば教えてください。

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尾花佑季(Key.):

とにかくこれまでの大聖堂をまるっとみせられるような、「これまで少しでも聴いてくれたみなさんありがとう・これからも楽しみにしてね」という演奏をバシっとみせてやるぞ!と思っています。
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成瀬圭(Ba.):

対バンが素敵なので楽しみにしていてください(僕らも頑張ります)。
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町野陽輝(Gt.):

最近は新しい曲に加えて、ライブでは演奏していなかった過去の曲も改めてセットリストに組み込んだりしているので、大聖堂のいろんな側面と変化を感じていただけたら幸いです。
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山本康博(Vo./Gt.):

かっこいいギターソロが弾きたい!

ー今後の活動について、バンドとしての展望や目標を教えてください。

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尾花佑季(Key.):

大変身じゃなくともアハ体験くらいでいいので成長しつつ、とにかく続けていけたらいいなと思っています。
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成瀬圭(Ba.):

前の質問で5年経過と気づいて、ちょっと焦りました。もっと頑張りたいです。
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町野陽輝(Gt.):

実はすでに次の曲に取り組み始めていて、コンスタントに新しい曲をお届けしていくつもりです。EPを聴きながら、次の曲も楽しみにしていただけると嬉しいです。
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山本康博(Vo./Gt.):

良い湯、良い夢、良い曲!音楽を続けていくでやんす!

INFORMATION

NEW EP「大変身」

2023年3月22日(水)
Label:anon
Distribution:NexTone Inc.

収録曲
1.花を買って帰ろう
2.今夜すべてのBarで
3.歌になりたい
4.雨傘
5.大ファンク

▼配信リンク
https://nex-tone.link/A00114446

LIVE INFORMATION

<大聖堂『大変身』Release Party(仮)>

2023年4月9日(日)開場12:00/開演12:30
下北沢BASEMENT BAR
出演:大聖堂 / 砂の壁 / and more
チケット:2,600円+1ドリンク

▼チケット予約
https://forms.gle/2wa3i7iaXdwvgpvy8

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大聖堂(だいせいどう)

写真右から反時計回りに、山本康博(Vo,Gt)、尾花佑季(Key)、町野陽輝(Gt)、中西和音(Dr)、成瀬圭(Ba)。
2018年に結成し、東京を中心に活動をスタート。ライブ活動を中心とした活動を経て、2020年5月に1stアルバム『大作戦』を自主リリース。その後同年8月にはEP『夏の終わり』を配信リリース。 2022年夏に発表したシングル「花を買って帰ろう」が各種配信サービスのプレイリストに選曲されるなど、注目を集める。

時代や国を問わずさまざまなルーツやエッセンスを感じさせる音楽性を特徴とし、「懐かしさと新しさが同居する」グッドミュージックを日々創出し続けている。
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