文化を融合させるストーリーテラー・michel ko。そのルーツから音楽観に迫る

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文: 黒田 隆太朗 

1st EP『bleu』をリリースしたmichel koにインタビュー。音楽の道を志した動機やルーツ、新作に込めた想い、そして所属するアート・コレクティブ「Solgasa」のビジョンについて語ってもらった。

自身を“ボーカリスト”ではなく“ストーリーテラー”だと語るmichel ko(ミケル・コー)の歌は、儚くも抒情的であり、映画のようなドラマを思い浮かばせる。幼少の頃からMandopopやK-POPに親しみ、Frank Oceanの詩に感銘を受け音楽の道を志した彼は、いくつもの文化を結びつけるように音楽を生み出す。英語、日本語、中国語の三ヵ国語を用いて綴られるその歌は、まさしく彼自身が掲げる“フュージョン・スタイル・ミュージック”という名に相応しく、ジャンルの垣根が溶解した現行シーンが求めるセンスだろう。今回はZOOMで接触し、ルーツから新作『bleu』に込めた思い、さらには彼が所属するアート・コレクティブ「Solgasa」のビジョンについて語ってもらった。

感銘を受けたFrank Oceanの詩

ー今日はmichelさんのバックグラウンドから、新作『bleu』のことや所属するコレクティブ・Solgasaについてお話を聞けたらと想います。

よろしくお願いします。

ー幼少の頃親しんでいた音楽はありますか?

Mandopop(中国の流行歌)は聴いていましたね。なかでも台湾のアーティスト周 杰倫(Jay Chou)をお母さんがめっちゃ好きで、小さい頃から聴いてました。周さんの音楽は、自分の音楽とちょっと似てるかなと思います。

ーmichelさんが音楽を作り始めたのは?

音楽を作り始めたのは高校1年生くらいからです。それまではサッカー少年でした。大学1、2年生まではプロのサッカー選手になりたくて、日本の大学に入った理由もサッカーのためだったんですけど、日本に来る前に目標を3つ設定していて1つ目はサッカーでプロ選手になること、2つ目は美術のエキシビジョンを自分で作ること、3つ目が音楽を作ることでした。ただ、自分がサッカーではプロにいけないという感じもあったし、日本の体育会は厳しいですから、1つ目の目標を目指す場合2と3ができなくなると思って諦めました。

ーなるほど。

その時はもう音楽の方が楽しかったのもあって、曲を作ってそこで自分の言いたいことを言おうと思ったんです。それで2018年の4月くらいからちゃんと音楽を始めて、2019年から音源をリリースしていきました。

ーmichelさんが創作するようになる上で、衝撃的な音楽体験などはありましたか?

僕は詩が好きだったんですよね。中学3年生の頃Tyler, The Creatorがやってるクルー、Odd Futureがめっちゃ好きで、その中でもFrank Oceanが大好きだったんですけど。Frank Oceanの曲を聴いた時、音楽と同じくらい詞が凄いと思って、彼の音楽に凄く新しい世界を感じました。その頃にはもう詞を書き始めていて、それからこっそり音楽も作っていきました。

ー新作のタイトルもFrank Oceanのオマージュらしいですね。

Frank Oceanの『Blonde』って、英語だったら“e”は入らないんですけど、フランス語の綴りではあれが正しいんですよね。そこをオマージュして、僕の作品も本来『 bleu』のスペリングは“Blue”ですけど、敢えてフランス語のスペルに変えています。

ーmichelさんの音楽にあるヒップホップやトラップの要素は、Odd Futureからの影響でしょうか?

そうですね。Odd Futureは自分のブランドを持っていて、彼らのファッションも好きでした。あと、ウェストコーストのOdd Futureに対し、イーストコーストではA$APmobが強くて。彼らもファッショニスタという感じがあって聴いていました。『At. Long. Last. ASAP』というアルバムが好きで、トラップやヒップホップの影響はそういうところにあるのかなと思います。Sound Cloudで育ったので、高校生の頃Lil Uzi VertPlayboi Cartiを聴いていて、それはインフルエンスとして今出てきている感じがありますね。

次ページ:ボーカリストではなくストーリーテラー

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弱冠20歳の日系台湾人シンガー。
幼少期から聴いていたR&Bやヒップホップに強い影響を受け、叙情的でナチュラルな感情表現、かつK-Popなどのアジアンポップからも強い影響を受け、エモーショナルでキャッチーなメロディーラインが特徴の和洋折衷な若手のホープ。
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