[.que]『Dreaming』。心に寄り添いながら描く未来

Review

文: 黒田隆太朗 

エレクトロニカ/フォークトロニカの分野で、国内有数の評価を得るカキモトナオのソロプロジェクト・[.que](キュー)が、1月20日にリリースした12作目のフルアルバム『Dreaming』をレビュー。

 [.que]の音楽は心の深いところに触れる。淡い色味で発光するような柔らかい音色と、抒情的なメロディ。そのあまりに感情的な旋律。泣き腫らしたあとに見る朝焼けのような、そんな言葉にできない美しさがある。エレクトロニカ/フォークトロニカの分野で、国内有数の評価を得るカキモトナオのソロプロジェクト・[.que]。彼が作る音楽は言葉よりも雄弁で、映像のように鮮やかであり、そして子供のような無邪気さでこちらに迫ってくる。

 2021年の1月20日、[.que]の新作『Dreaming』がリリースされた。1stアルバム『sigh』以降、ほとんど年に1枚のペースでアルバムを発表。本作が12作目のフルアルバムである。

 中でもこの1年ほどの[.que]は実にひたむきなリリースを続けている。昨年5月にはコロナ禍による外出自粛が続く中、「私たちに光を、私たちの光を」というコメントと共にEP『Our Light』を発表。7月にはアルバム『And Inside』をリリースすると、翌月にはコンピレーション・アルバムや展示用音楽として発表してきた楽曲などを集めた『Reassemble 2010-2013』をドロップ。10月からは本作『Dreaming』の先行曲として「Moonlight」、「Tokyo」、「Memories」をシングルカット。社会全体が疲弊した空気に包まれる中、彼の音楽に癒された人も多いのではないだろうか。

 前作『And Inside』がシリアスな響きを持ったダークな作品だったのに対し、『Dreaming』は慈しみ深さや温かみを感じるアルバムである。サウンドの中心は彼が演奏する鍵盤で、おおよそ『Any』以降の傾向とも言えるピアノを主軸とした創作の最新系と言えるだろう。電子音の要素はおおよそ後退し、ピアノ・アンビエント、ポストクラシカルとしての側面を強めたアルバムだ。

 ロックバンドという出自を持ち、ギターを自身の楽器として演奏してきた彼にとって、ピアノは大人になってから習得したものである。いくつもの作品をリリースしながらも、依然創作における瑞々しさが失われないのは、彼が自らにとって新鮮な楽器を手にしているからかもしれない。恐らく日に日に自分の身体に馴染んでいくのを感じながら、その音を楽しんでいるはずである。

 本作を聴いていると、寒い日に暖を取るような心温まる気持ちになるだろう。が、同時にどこか寂寞感が漂う作風でもある。否応なく自分自身と向き合う時間の増えた、この時代の空気を含んでいるのかもしれない。都会の夜を思わせる音楽で、街中でひとりネオンの明かりを見上げるような孤独感や、静かな夜に自身の過去を思うようなノスタルジア、ベッドルームで読書に耽るような安らかなひと時など、そんなシーンを連想させられる。

 タイトルの『Dreaming』は睡眠時に見る”夢”と、東京への憧れとしての”夢”を掛け合わせたものだという。「Dream」ではなく「Dreaming」であることから、それは現在進行形の“夢”なのだろう。つまり、この音楽が見ているのは未来である。

黒田隆太朗

[.que]『Dreaming』

2021年1月20日(水)
EMBRACE
¥2,750(tax incl)

01. Dawn
02. Moonlight
03. Memories
04. Anywhere
05. 20191014
06. Tokyo
07. Ordinary Days
08. Snowy Day
09. By the Window
10. Clear
11. One Night
12. End of a Day
13. By Your Side
14. Until Then
15. Particles

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黒田隆太朗

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徳島県出身。
幼少期よりギターを独学で学び2010年より[.que]名義で本格的に活動を開始。 新たなる『日本』から発信される才能、フォークトロニカの新星として活動初期より注目され、一聴して伝わるメロディー、美しい楽曲は世界中から大きな賞賛を浴びている。

近年ではインストゥルメンタル作品のみならず、作詞作曲編曲のすべてを手掛け、枠に捕われない自身の音楽性を発揮。
作品のみならずCM音楽、空間演出音楽も多く手掛け、その他楽曲提供やリミックスなど活動は多岐に渡り様々なコラボレーションを行っている。

ライブではフェスへの出演、海外アーティストとの共演、また海外ツアーも経験。
バンドルーツを感じさせる楽曲、パフォーマンスに魅了される人も多く、さらなる活躍が期待される音楽家である。

常に「今、鳴らしたい音」を表現し続けている。
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