文: 石角友香 編:Miku Jimbo
こんな形容は多様性の時代にどうかとも思うのだが、彼女のビジュアルから受けるイメージは最大公約数的な“イマドキの可愛い女性”だ。しかし、先日行われた新宿歌舞伎町での路上ライブの映像を見たところ、正直意表を突かれた。その場にいるオーディエンスに目を配りながら、かなりリアルでブルージーな側面もあるオリジナルを歌う表情はなかなかに渋い。甘さとハスキーさを併せ持つ声に感情が乗ると切なさが増幅する。何より自分の歌をパフォーマンスする態度の強度に魅了される。この人は歌いたいことがしっかりある人だ、そう思った。
幼い頃から音楽に触れ、13歳からギターを始め、中学・高校時代は軽音楽部に所属し、20歳から弾き語りでシンガーソングライターとしてのキャリアをスタートしている。大学時代はTenkiAmeというバンドでボーカル&ギターを担当していたそうだ。ずっと音楽と共に育ち、生活の一部になっているその様子は一見、順風満帆だが大学進学の時期に挫折もあったらしい。その辺りは1stシングル「減るもんじゃないからキスをした」のリリースタイミングでのインタビューが詳しいので読んでみてほしい。大学生活と音楽スクールでのレッスンの日々を並行したのち、2023年7月に<early Reflection × SHOWROOMオーディション>にてグランプリを獲得し、2024年1月に前出の「減るもんじゃないからキスをした」を配信リリース。そして現在はほぼ毎日のように“Pococha Live”を通じて弾き語り配信を行い、都内ライブハウスでライブを行っている。
「減るもんじゃないからキスをした」は一見ストレートすぎるタイトルがなかなかパンチが効いているが、これから恋愛が始まるのかな?と自分の気持ちを試してみたのに相手はもしかしたら飄々と掴みどころがない人物なのか、彼女は振り回されているようだ。決して重い感情ではなく、始まってしまったことで相手がかけがえのない存在であることに気づいて少しふわふわしてる感じとでも言おうか。それを涼しげでスピーディなインディポップ調のトラックに乗せて歌うユニークな楽曲だった。メロディの閉じ方にちょっと尾崎世界観(クリープハイプ)にも似た声の表現が聴こえたりして、甘さとハスキーさが共存するほのんの声にハマっているのも面白い。
今回リリースする2ndシングルは「東京海月」。“海月”と書いて“くらげ”と読む。浮遊するイメージ通りのイントロが鳴り、これまでで最も楽器の数も多い、いわゆるJ-POP的なアレンジが耳を掴む。夜道で月を見上げる二人が浮かぶようなAメロを経て、実は電話で話していることがわかるBメロ。この構成の順番がなかなかいい。サビでは《東京はまだ似合わない》と、二人の年齢やキャリアを想起させ、全体の歌詞の中でも孤独感をうまく象徴する《東京タワーも寂しそうだから》というフレーズが曲全体の個性を底上げしている感じだ。そしてこのフレーズに続く部分が1、2番では《来週もまた会いたいな》なのに対し、ラストサビでは《来週もまた会いに行こう》へと能動的に変化することで、リスナーの背中も少し押されるんじゃないだろうか。さらに大人っぽいリードギターのオブリガートや弾むストリングスのアレンジが歌詞とメロディに情景や色を差し、楽曲を立体的に響かせる。
ほのんの描くラブソングが清々しいのは、毎日の生活と目指す大きな夢が軸にあり、その中で時に惑わされたり励みになったりする他者との関係を嘘なく描いているからだと思う。彼女と同世代の20代の女性を筆頭にさらに共感が広まるはずだ。
RELEASE INFORMATION
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New Single『東京海月』
2024年9月25日(水)リリース
〈early Reflection〉
early Reflection
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