Age Factoryの新章を飾る最新作とバンドの現在地。今この音で作っていることは残り続ける

Interview

文: 黒田隆太朗  写:上村 窓   編:riko ito 

聴き手の感情を強く揺さぶる楽曲と熱量の高いライブパフォーマンスで結成当初からファンの心を掴む奈良発ロックバンド・Age Factory。前作『Songs』の全国ツアーを経て感じた変化と直近のバンドのモードを伺いつつ、2025年7月16日にリリースした最新アルバム『Sono nanika in my daze』に込めた想いについてメンバー3人に語ってもらった。

このノイズは誇りだ。そしてロマンでもある。Age Factoryの新作『Sono nanika in my daze』。彼らにとって6作目のアルバムである――が、むしろ自主レーベル〈0A〉(読み:ゼロエー)を設立してから最初のアルバムであるという意味合いのほうが強いだろう。前作『Songs』から西口直人(Ba. / Cho.)がミックス・マスタリングを行うようになり、自分たちのバイブスや美学を外部のフィルターを通すことなく提示するようになった。

本作について「内省的なアルバム」だとメンバーが語っている通り、『Songs』とはまったく異なるベクトルを持った作品だ。「みんなに歌ってほしい」という願いが結実したアンセミックな前作に対し、『Sono nanika in my daze』にはどこか寂寞感があり、そして屹然とした輝きがある。いわば外へ外へと向かっていった果てに目を向けたのが、その内面の宇宙ということである。面白いのは「リファレンスがほとんどない」という本作こそ、ここ最近の彼らのアルバムの中で最もバラエティ豊かであるという点で、閉じるからこそ広がる世界がここにはある。「すべての始まりになればいい」と。そう、ここから始まるのだ。

今まで辿ってきたことへの自負と次のフェーズに向かうための作品

ー『Sono nanika in my daze』はご自身たちにとってどんな作品になりましたか。

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清水英介(Vo. / Gt.):

レーベルを立ち上げての第一作目なので、すべての始まりになればいいなと。Age Factoryというもの――それは俺たち3人だけではなく自分たちのテリトリーにいるクリエイターたちも一緒に、やっと始まりと言えるアルバムを作ることができたなと思います。
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増子央人(Dr. / Cho.):

今回は自分たちの想像を超えたというか、3人の掛け算だけでなく、lil soft tennisYDIZZYが入ってくれたこともあって、完成したときに「俺たちこんなこともできたんや」と思いましたね。
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西口直人(Ba. / Cho.):

『Songs』のときのような「フロアでみんなに歌ってほしい」ということはあまり考えずに、自分らで「これがカッコいいやろ!」と思えるものを信じて作ったところが大きくて。内省的なアルバム、みたいなイメージがあります。

ーこれまでは『LOVE』『GOLD』『Songs』など、端的にタイトルでモードを示す作品が多かったと思います。それに比べると『Sono nanika in my daze』は抽象性が高く、ジャケットもぼやけていて、具体性を避けているような印象を受けました。

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清水英介(Vo. / Gt.):

僕らから明言しないことによるイメージの膨らみ方に重点を置いています。みなまで言わない。てか、みなまでもなくて。なんて言うか、全体的にオチがない。こうなってほしいとか、そういう気持ちがすべての曲にない。
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西口直人(Ba. / Cho.):

今作は曖昧なものを曖昧なまま出すという形なのかなと思います。何かを目指すとか、何かを手に入れるとか、そういう話じゃない。向き合っていること自体にフォーカスしている感じがしますね。

ー『Songs』のリリースから約1年半の期間がありました。その間に経験したことで、今回のアルバムに影響を与えたと思う出来事はそれぞれどんなことがありますか。

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清水英介(Vo. / Gt.):

思い出深いのはやっぱり台湾も含めて32公演のツアーをやり遂げたこと。みんなで歌ってほしいと思って作ったアルバムを出して、がむしゃらに32本やって、実際にいろんなところでみんなと歌えたツアーだったんですけど。それが終わってから虚無感ではないですけど、求めていたものと反対のエネルギーが欲しくなったのを覚えているっすね。すごく充実感があったんですけど、これをリピートしていくだけにはなりたくないから。俺は次に何がしたいのか?という気持ちがデカかったです。

ー作品の資料には「ずっと誰かを救いたかったのに、重く淀んでいく時間の中で俺はこの作品に救われた」というコメントを出していましたね。

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清水英介(Vo. / Gt.):

ライブを良くしたいとかはあったんですけど、フィジカル面以外で自分たちがどういう方向に進んでいるのかというのがあんまりわからなくて。そういう意味で“明瞭”ではなかった。自問自答しながらライブ活動をしていて、ライブをしていると目の前にあるものが答えっぽくなるんですけど、やっぱりそれでよしとはできないから。その先にあるものを見つけなきゃな、と思っていました。『Sono nanika in my daze』はこれを作ることができた仲間、場所、今まで辿ってきたものへの自負であり、そして今後行かなければならない次のフェーズに向かうための作品でもあるという感じです。

ー本作には自主レーベル〈0A〉の存在も不可欠だと思います。改めてレーベル名の意味と設立の経緯を伺えますか。

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清水英介(Vo. / Gt.):

自分の名前にも(Aが)入っているし、RY0N4の名前には0が入っていたり、いろんな意味があるんですけど。名前の由来としては0から1を作り出すということです。レーベルを作らなくても音源は出せるんですけど、僕たちはできるだけセルフでやりたくて。そういう想いが『EVERYNIGHT』くらいからあったので、僕からすると活動の流れと共に自然にそっちへと向かっていったというか。音源をリリースするときに変なフィルターを通したくないし、自分たちが描いたものができるだけそのまま届けばいいなと思うから、レーベルを作る以外にないかなという感じでした。

ー増子さんと西口さんは、本作に影響を及ぼしたと思う体験はありますか?

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増子央人(Dr. / Cho.):

『Songs』のツアーをして帰ってきてから、ひとりでスタジオで練習する時間が多かって。たとえばヒップホップのちょっとハネてる感じのビートとか、フレーズの幅を広げたくて。インスタに出てくるいろんなジャンルの海外のバカうまドラマーのフレーズをパクっていた時期やったんですけど。アルバムの制作が始まってから、そこで練習したことを英介が持ってきたギターリフに合わせてみたらいい感じにできたのが印象に残っています。
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西口直人(Ba. / Cho.):

Age Factoryのアルバムでは『Songs』で初めて自分がミックス・マスタリングをやったんですけど、それ以降は他のバンドの曲を聴くときでも、良い音じゃない音源はしんどいなと思うようになりました。それは高品質という意味ではなくて、バイブスのない、何をやろうとしているのか明確じゃない音源のこと。そう思ったらRECしてミックスしてマスタリングをするという工程において、手放しで自分たちと違うバイブスのものを作るのは良くないなと思いました。

ーなるほど。

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西口直人(Ba. / Cho.):

あと、自分的に決定的やったのが、TURNSTILE(ターンスタイル)が日本に来たじゃないですか(2024年7月30日、31日の東阪ワンマン公演)。僕は行けていないんですけど、フォーリミ(04 Limited Sazabys)のGENくんがTURNSTILEのライブを観に行ったことをインスタに上げていて。その投稿に「ハードコアというダンスミュージック」とたしか書いてたんですよ。俺はそれにめっちゃ食らいました。Mall Grabと一緒にやったり、TURNSTILEは特にそれを意識していると思うんですけど。たとえば最近ハードコアでめっちゃ人気があるSPEED(スピード)も、確かにめちゃくちゃ踊れる。知らん間に自分的にもそれがスタンダードになっている印象があって、今回のアルバムはそれが出てる感じがします。

ーダンスミュージックからの影響はここ最近の作品にも見受けられますし、去年の日比谷野音ワンマンライブでも、SEでFred Again..(フレッド・アゲイン)を流していましたよね。

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清水英介(Vo. / Gt.):

流してたかも。
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西口直人(Ba. / Cho.):

3人共大好きっす。
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清水英介(Vo. / Gt.):

テーマや意味ばかり求めているのではなく、普通に踊れるものを作りたい。そのためには、ライブをやっていて自分たちが楽しくないといけないし、自分たちが踊れないといけないのでね。その気持ちは今後もずっと持っているものだと思います。

ーその意味ではドラムが重要ですね。

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増子央人(Dr. / Cho.):

それはずっと意識しています。だからAge Factoryはスネアの位置が割とわかりやすい曲が多いんですよ。2、4(拍目)とか。キックはメロディに寄り添って、でも、スネアを崩さんかったら人はずっと踊れると思うので。そういうところで特にスネアの位置は意識してます。

「歌ってほしい」とは思っていない、置いてけぼりにしたかった

ー今作で一番気に入っている曲を挙げるとしたらどの楽曲を選びますか?

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増子央人(Dr. / Cho.):

俺は時期によって変わるなと思います。前までは完全に「鳴っていたピアノ」やったんですけど、今は「海に星が燃える」ですね。2曲ともわかりやすいサビがなくて、一番盛り上がっている場所が楽器の演奏なんですよ。意外とそういう曲をやったことがなかったけど、メロがいいからキャッチーになっているんです。こういう曲ができたことがすごいなと思いました。

ー「海に星が燃える」はアンセミックな響きがあり、『Songs』の系譜を引き継いだ曲だと感じました。ただ、同時に「RIVER」を思い出したんですよね。

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清水英介(Vo. / Gt.):

歌の話で言うとマジでそうですね。「RIVER」と同じで「一緒に歌って」と思ってへん歌い方をしてるっす。そこは置いてけぼりにしたかった。それはアルバム全体で思っていたことで、今回は「歌ってほしい」とは思っていない。「歌う」と思っていたから。

ー清水さんが挙げる1曲は?

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清水英介(Vo. / Gt.):

終わってからできてよかったな、と思ったのは9曲目の「Because」。これは僕的に唯一具体的に埋められなかったラストのピースでした。抽象的なことがテーマだったこともあり、最後の1個がすごく難しくて、逆に何も考えずに普段通りに作った曲です。一番ラフに歌えたというか、「自分のままやな」みたいな。僕的には原点そのもの、「オルタナティブじゃなくてやっぱギターロックやな」みたいな曲です。
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西口直人(Ba. / Cho.):

俺が毎回感動するのは10曲目の「Sono nanika in my daze」です。本当に性癖に近い、原始的に感動するもの。音がデカくて、メロディが良くて、あとアルバムの最後にこの曲があることの重要さというか。「陽炎」から始まって「rest/息」があって、9曲目に英介が言ったようなトラディショナルなギターロックの「Because」があって、そしてラストに「Sono nanika in my daze」が来るという。その流れも含めて一番感動する曲です。

ーこの曲はMogwai(モグワイ)とかAmerican Football(アメリカン・フットボール)を思い出しました。

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西口直人(Ba. / Cho.):

ピアノガールという京都の先輩のバンドで、サポートギターのBOYが元々やっていたバンドがあるんですけど。何十カ所も一緒にツアーを回ったこともあるし、彼らの「Wind Chime」という曲からの影響はデカいですね。
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清水英介(Vo. / Gt.):

でも、今回のアルバムは一番リファレンスが少ないです。これを聴いていた、みたいな印象が『GOLD』とか『EVERYNIGHT』にはあるんですよ。でも、このアルバムはマジでない。
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西口直人(Ba. / Cho.):

自分らの中でこういうものが好きやったという妄想というか。
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清水英介(Vo. / Gt.):

そうそうそう。
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西口直人(Ba. / Cho.):

そういう当たり前にあるものが出力されている感じがするっすね。

ーただ、作品を通してポストロックの要素は感じました。

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清水英介(Vo. / Gt.):

めっちゃありますよ。原点的に僕らが好きだったのはそっちですしね。それこそ〈残響レコード〉とか、最初はよくイベントに出させてもらっていましたし。
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西口直人(Ba. / Cho.):

なんならもう残響キッズでしたね。
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清水英介(Vo. / Gt.):

LOSTAGEも最初はね、結構そっち系ですから。ポストロック、シューゲイズ、オルタナティブ、ハードコア――その4つがホンマ僕らの根幹にあるバンドサウンドです。
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西口直人(Ba. / Cho.):

3年ほど前に17歳くらいの高校生のラッパーと話す機会があったんですけど、その子に「バンドとか聴くん?」って聞いたら、「ラッパーが聴きそうなバンドを聴くっすよ」って言われて。俺はそれがわからんかったので、「具体的に誰なん?」って聞いたら「アメフトとか」って言うんです。偶然なのかわからないですけど、時代が回って僕らが原体験として持っているものと合致している感覚が割とあるんですよね。それこそDTM世代はシューゲイザーが好きだと明言している方が多くて、韓国のParannoul(パラノール)だったり、あとはメイドコアとか、バンドが好きでDTMをやる人が結構増えていると思っていて。その辺との合致は「may feat. lil soft tennis」に顕著に出ていると思います。

ー「may feat. lil soft tennis」には“ハイパーポップを通過したAge Factory”というイメージを抱きました。

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清水英介(Vo. / Gt.):

lil soft tennisの乗せ方がやっぱりハイプなので。歌詞も含めて、ロックの概念にあまりない存在やった。でも、Age Factoryとやるってことはバンドサウンドになるということだから。lil soft tennisが最初の歌い出しの2行を持ってきて、そのフローを殺したくないなと思いながら作っていたんですけど。彼がいたからこそできた曲やなと思います。
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西口直人(Ba. / Cho.):

「ハイパーポップ以降」というのは的を射てる感じがするっすね。ギターのアルペジオで始まって、サビでコードが入ってきて。本来のハイパーポップで言えば、そこに歪んだヤオヤ(TR-808)があって、ハーフ(テンポ)になって、トラップのリズムになるわけですけど、そのニュアンスに近いものがあります。でも、それって元々ロックが持っていたものやと思うんですよね。100 Gecs(ワンハンドレッドゲックス)とかがやっていることって、ロックが持っていた強さみたいなものを誇張して今のSoundCloudシーンとかトラップの流れに落とし込んだ結果だと思っているので。なのでハイパーポップを意識したというよりかは、ロックが好きだから自然とハイパーポップも好きになれて、その結果の出力という感じがします。

ーlil soft tennisにはどんなところでシンパシーを感じますか?

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清水英介(Vo. / Gt.):

lil soft tennisはシンパシーというよりも、影響を与えてくれるくらい独自。だからこそ独自だと思われなきゃな、と思うくらいの相手です。
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西口直人(Ba. / Cho.):

付き合いが長いんですよ。あいつがlil soft tennisって名前で1個目の音源を出す前から、一緒に遊んだりライブを観にいったりしてて。実はミックス・マスタリングのところで話した、「自分らのバイブスを提示している音源が好き」というのも、lil soft tennis始まりです。自分でミックスをするのは“良い音にする”という意味ではなく、“自分たちの音にする”という意味だから。絶対自分でやったほうがいいっすよって、彼が3、4年前から言っていたんです。昔出したあいつの音源を聴くと、実家で歌を録っていたのでお母さんが皿洗いをしている音とかが入っているんですけど、それがめっちゃ良かったりして。そういうのを教えてくれたラッパーですね。

直接残らないものがどこかに影響を与える

ーもう1曲ゲストが入っている曲がありますね。「hernoiz feat. YDIZZY」はシビれました。電車で聴いているとその場で踊りだしたくなるというか。

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西口直人(Ba. / Cho.):

なんでですか(笑)。電車じゃなくても踊りたくなってください。
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増子央人(Dr. / Cho.):

(笑)。

ー面識はあったんですか?

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西口直人(Ba. / Cho.):

クラブで2回くらい会ったことがあって、挨拶した程度の関係性でした。
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清水英介(Vo. / Gt.):

YDIZZYから急に連絡があって。それで奈良に来たときにデモを聴かせたら「この曲いけるっす!」みたいな感じになって。
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西口直人(Ba. / Cho.):

英介が今歌っているところしか入っていない状態だったんですよ。それを携帯で1分くらい聴かせたら「マイクどこすか?」って言われました。あのときの会話、意味がわからんかった。曲のテーマを聞かれて英介が「ノイズかな」と言ったら、YDIZZYが「ノイズ……いけます」って(笑)。
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清水英介(Vo. / Gt.):

しかも「どちらかと言うとher noize」、「俺らのノイズじゃなくて、あの子のノイズが俺らのノイズ」みたいな――ホンマこういう会話をしてたらできたっす。

ー(笑)。

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清水英介(Vo. / Gt.):

しかもそのときのテイクがそのまま使われています。
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西口直人(Ba. / Cho.):

録り直しもしてなくて。僕らが制作で使っていたマンションの一室があるんですけど、防音もちゃんとしていないようなところでYDIZZYがメモも取らずにフリースタイルで入れたものがそのまま音源になっているんです。

ーすごい!

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西口直人(Ba. / Cho.):

曲を録ってたとき、ずっと焦ってたしね。
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清水英介(Vo. / Gt.):

キレてたもんな。
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西口直人(Ba. / Cho.):

僕がセッティングするじゃないですか。その間ずっと「いけるっす! 早く早く早く!」みたいな。

ー早く出さないと逃げちゃうんですかね、言葉が。

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西口直人(Ba. / Cho.):

たぶんそうなんだと思います。なので俺怒られてるのかな、みたいな(笑)。やっぱり30曲入っているアルバム(『MASTERPIECE!!!』)を出しているだけありますね。
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清水英介(Vo. / Gt.):

歌詞でYDIZZYがなんつってるんだっけ?
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増子央人(Dr. / Cho.):

《Ageが時空を超えて今会いに来んだろ?》
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清水英介(Vo. / Gt.):

そうそう。「陽炎」で歌っている星の話があって。直接残らないものがどこかに影響を与えるんでしょという、僕は勝手にそれと今回のアルバムのテーマ性には近いものを感じていて。時間とか全部関係ないところで繋がれている感覚があって、そうしたらYDIZZYが同じような一文を入れてきてめっちゃドキッとした。あいつも94年生まれで同い年やから、サウンドを通して同じ感覚になったんかな。

ー「陽炎」の《星って見える頃には死んでるんだ/だから今この場所を照らしてることも知らない/この目には確かに映るのに》という一節ですね。

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清水英介(Vo. / Gt.):

秘めているものは言葉にしてもわからないじゃないですか。でも何年か先に俺らが今この音で作っていたことは残り続けるし、そういうのがいつか誰かに届けば俺らは幸せやなって思う。

ーなんで「陽炎」というタイトルにしたんですか?

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清水英介(Vo. / Gt.):

陽炎って夜に見えないじゃないですか。あと、「陽炎」ってうまく英語にならんかったんですよ。近いニュアンスの自然現象のワードはあったんですけど、「陽炎」は日本独特の言葉やったんです。ジャパン・オリジナルなノリが最近好きやし、自分たちが日本人っていう意識が、俺はちょっとあるよっていう。そういう部分も音楽で出せていると思っているし、出ててほしいとも思っている。それはリリックも、音も、フレーズもそうだし、日本の景色を彷彿とさせるものであってほしいと思っているから。
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西口直人(Ba. / Cho.):

ジャケットも生活圏内ですしね。

ー風景がほとんど夜なのには理由があるんですか?

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清水英介(Vo. / Gt.):

うーん…でも、時間軸がない曲も多いですね。1個思うのは、マンションのスタジオに行くのに毎日歩いて行って帰っていたんですよ。その道中ずっとこのアルバムのことだけ考えていて。何もない道で別にストーリーもないんですけど、なんかこの感じ、その空気感をパッケージしたいなと思ったんですよね。

ー最初に西口さんも「内省的なアルバム」と言われていましたが、コロナ禍に出た『EVERYNIGHT』も内省的なニュアンスが強かったと思います。あの作品と今作における“内省”は、どこに違いがあると思いますか?

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清水英介(Vo. / Gt.):

あれは誰かがいるからこその内省だったんですけど、今回はたぶんひとりしかいない気がする。誰かがいたが故にそれを通して何かを感じたり、「今はいない」ということを考えたけど、これは元から誰もいないから。自分にしか(気持ちが)向かうところがない。
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西口直人(Ba. / Cho.):

他のインタビューで1st EPの『手を振る』(2014年)と思想的に近いと言われたんですけど、英介的にもその感じがあるという話をしていて。それを聞いて思い出したのが、「真空から」(『手を振る』収録)が出たときに、海外のライターさんなのかリスナーさんなのかが、SNSに「Shinkukara(from alone)」って書いてツイート(現:ポスト)してたんですよ。俺はそれを見てすごい受け取り方しているなと思った。『Sono nanika in my daze』が『手を振る』の感覚に近いというのは、ひとりしかおらんということなのかなと思います。

全部デカい音で聴かせたい。“気合い”表現した最新アルバム

ー中盤の「3」と「漆黒」は『LOVE』や『RIVER』、あるいはそれ以前のとげとげしくて殺気立ってた頃のAge Factoryを思い出します。

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清水英介(Vo. / Gt.):

これも自分たちの根底にあるものですね。エモーショナルな曲ももちろん好きやけど、普通に自分たちがテンション上がるからやっているという。俺たちがただ演奏していたらカッコよくて、その先の聴いている人とかは別に考えてない。この曲をやっているときの僕らのテンションの上がり方がすべてみたいな。それを嘘をつかず入れたという感じです。

ー昔は怒りが原動力になっていたと思うんですけど、「3」や「漆黒」にそうした感情は宿っていると思いますか?

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清水英介(Vo. / Gt.):

いや、怒り的な要素は皆無ですね。ただ、これで踊られへんかったらちょっとだるいな、みたいな感じはあるっすけど。

ーなるほど(笑)。

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清水英介(Vo. / Gt.):

だからこそ一番クールに演奏したいと思うすよ。

ー「漆黒」の不気味なベースで始まってそこにドラムが入ってくるという構成は、以前はしばしばやっていたと思うんですけど、最近はなかったなと思いました。演奏で意識していたことはありますか?

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西口直人(Ba. / Cho.):

ベースのフレーズが先にあったんですけど、ドラムを入れるタイミングで、ドラムのキックの頭が「ここじゃなくない?」と思うようなところで鳴るようにしました。つまり、ベースが休符から始まっているんです。ドラムが入ってないとそこが休符だと認識できへんくて、ドラムが入ってから「あ、ここ休符やったんや」となるという。そこが好きですね。
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増子央人(Dr. / Cho.):

フレーズの頭の位置を騙すじゃないけど、ドラムが入ってきて初めてドキッとするみたいなね。
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西口直人(Ba. / Cho.):

それによって踊れるというか、リズム感が出るなと俺は思っています。「3」は丸太みたいな音なんですけど、「漆黒」はすごく音が広くて、ハードコアムードだけど意外とスネアがハネの位置に入っていたり、若干フェスティバル感があるんですよ。実は祝祭感がある曲だと思っています。
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増子央人(Dr. / Cho.):

ドラムのフレーズだけで言ったらグランジを意識してます。あとはMETZ(メッツ)のドラマーかな。とにかく無骨にAメロは進んでいくんですけど、あとはハネさしていて。ちょっと踊れる要素が入っているほうがいいよね、という感じでやってました。

ー身も蓋もないことを聞きますが、「3」や「漆黒」はすさまじいシャウトですよね。どうやってこんな声で歌うんですか?

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清水英介(Vo. / Gt.):

……やっぱり舐められたくないんでね。(早口で)もう気合いっす。
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西口直人(Ba. / Cho.):

(笑)。
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清水英介(Vo. / Gt.):

脳みその血管がちぎれるかもしらん、毎回頭がワッ!ってなるくらいノー準備運動でいきなりやる。デスボイスの出し方で「吸って息を出さずに」とかあるけど、そういうのはやんないです。
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西口直人(Ba. / Cho.):

声量が小さくてもいいからシャウトするって言うよね。
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清水英介(Vo. / Gt.):

これ書いといてほしいです。声量がデカくなるようにシャウトする。
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増子央人(Dr. / Cho.):

びっくりするわな(笑)。スクリーム界隈の人が聞いたら。
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清水英介(Vo. / Gt.):

「英介さんみたいにシャウト出したいです」と言ってくれるファンの子がいるんですけど。ホンマに気合いです。
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増子央人(Dr. / Cho.):

こいつに聞いたらダメです。聞く人を間違えているんですよ。

ー(笑)。

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清水英介(Vo. / Gt.):

ドラムで言うとさ、一番力を入れて、力んでスネアを叩く。
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増子央人(Dr. / Cho.):

でも、それはマジでそう。

ーそうなの?

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清水英介(Vo. / Gt.):

ホンマは叩く瞬間にね。
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増子央人(Dr. / Cho.):

脱力して叩くという、それがホンマやったんですけど。でも、まずは思いっきり叩く。
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西口直人(Ba. / Cho.):

ベースも全部気合いですよ。音源もできるだけ全部デカい音で聴かせたいです。
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清水英介(Vo. / Gt.):

「Sono nanika in my daze」の頭のファズも、僕BOYに言ってて。抉り込むように、ピックが6弦を弾き飛ばすように弾いてくれと。それやと正しくないんですけど、こだわりがあるから。
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西口直人(Ba. / Cho.):

さっき名前が出たMETZもそうですけど、地元の奈良や大阪で対バンして「かっけえ!」と思ったバンドって、マジで音がデカかったんですよ。マイブラ(My Bloody Valentine)のライブで耳栓が配られるみたいな話もありますし。4、5年前くらいのlil soft tennisが最初に受けてたインタビューも、ホンマに「気合い」しか言ってなくて(笑)。やっぱみんなそう思ってるんやなと思いました。
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清水英介(Vo. / Gt.):

「陽炎」のハードなところも気合いが反映されています。

ーノイズというかね。

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西口直人(Ba. / Cho.):

ギターがすごい音してますから。それこそ韓国のParannoulだったり、その辺の影響はデカくて。絶対気合いが入っているじゃないですか。

ー気合いというか、美学や哲学を感じますよね。俺はこれをやるんだという。

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西口直人(Ba. / Cho.):

それはあるっす。

ーつまり、なんとなくやるんじゃないと。

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清水英介(Vo. / Gt.):

確かに。やるならやるってことですね。『Sono nanika in my daze』は、気合いを表現したっす。

ーもうすぐツアーが始まります(取材は8月上旬に実施)が、どんなライブになると思いますか。

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清水英介(Vo. / Gt.):

このアルバムが母体となったツアーがしたいです。前回は『Songs』というアルバムを出すまでのことも全部加味したセットリストを作っていて、言ったら今までの自分たちを最新のアルバムが後押しをしてくれるという感じやったんです。でも、今回はそうではなく、『Sono nanika in my daze』に対して今までの過去が存在しているような感じでセットリストを構築したいですね。

ー今後のバンドのビジョンはありますか?

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清水英介(Vo. / Gt.):

僕はもっとアジアでやりたいです。さっき言った日本のバンドの良さみたいなところを、ちゃんといろんなところに届けられるようになりたい。「日本のバンドってこういう感じやで」って、今アジアにガッツリ言いたいです。

Present Campaign

Age Factoryのオリジナルグッズ「“receipt" pake」を3名さまにプレゼント。応募方法は、DIGLE MAGAZINEのXアカウントをフォロー&上記の投稿をリポストするだけ。

※締め切り:2025年10月7日(火)18時まで

【注意事項】
・当選のご連絡に対して48時間以内に返信がない場合は、誠に勝手ながら辞退とさせていただきます。
・いただいた個人情報はプレゼントの発送にのみ使用させていただき、発送後は削除いたします。
・住所の送付が可能な方のみご応募下さい。また、発送は日本国内に限定いたします。
・フリマサイトなどでの転売は固く禁じます。

RELEASE INFORMATION

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Age Factory 6th Album『Sono nanika in my daze』

2025年7月16日リリース
label:0A

1. 陽炎
2. rest/息
3. 海に星が燃える
4. hernoiz feat. YDIZZY
5. 3
6. 漆黒
7. 鳴っていたピアノ
8. may feat. lil soft tennis
9. Because
10. Sono nanika in my daze

▼各種ストリーミングURL
https://linkco.re/H2P2ztmd

TOUR INFORMATION

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Age Factory presents “Sono nanika in my daze” Release Tour 2025

◼︎宮城公演
9月26日(金)at 仙台Rensa
OPEN 18:30 / START 19:30

◼︎石川公演
9月28日(日)at 金沢 Eight Hall
OPEN 17:30 / START 18:30

◼︎北海道公演
10月13日(月・祝)at Zepp Sapporo
with / 04 Limited Sazabys
OPEN 17:30 / START 18:30

◼︎福岡公演
10月19日(日)at Zepp Fukuoka
with / THE ORAL CIGARETTES
OPEN 17:30 / START 18:30

◼︎大阪公演
10月25日(土)at Zepp Osaka Bayside
OPEN 17:00 / START 18:00

◼︎愛知公演
10月26日(日)at Zepp Nagoya
OPEN 17:00 / START 18:00

◼︎東京公演
11月3日(日)at Zepp DiverCity
OPEN 17:00 / START 18:00

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Age Factory(エイジ・ファクトリー)

2010年4月結成。メンバーは、清水英介(Vo. / Gt.)、西口直人(Ba. / Cho.)、増子央人(Dr. / Cho.)。奈良県を拠点に活動を続ける3人組ロックバンド。

2014年にデビューEP『手を振る』をリリース。2016年に、LOSTAGEの五味岳久をプロデューサーに迎えた1stフルアルバム『LOVE』を発表した。2018年には2ndアルバム『GOLD』、2020年に3rdアルバム『EVERTNIGHT』、2021年に4thアルバム『Pure Blue』をリリースするなど、精力的に活動を行っている。

また、2024年2月21日には5thアルバム『Songs』をリリース。2024年3月17日(日)の宮城公演を皮切りに、同アルバムを携えた全国ツアーを実施。バンドとしては初の台湾公演も開催した。

2025年には自主レーベル〈0A〉(読み:ゼロエー)を設立。音楽にとどまらず、アーティスト、スタイリスト、デザイナー、カメラ マンなどジャンルを問わず所属し、クリエイティブ全体をプロデュース する場となる。楽曲制作やアーティストのプロデュースに加え、音源に伴うビジュアル やコンセプト設計まで一貫して手がける。さらに、同レーベルからの第一弾作品となる6th アルバム『Sono nanika in my daze』を7月16日にリリース。9月より同アルバムをたずさえたツアーを開催中。
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