文: 石角友香 編:Miku Jimbo
2010年代後半の札幌のバンドシーンの一つの特徴として、ストレートに想いを表現するギターロックバンドにいいアーティストが多いことが挙げられるだろう。KALMAしかりTHE BOYS&GIRLSやマイアミパーティしかり。その中に2020年、残念ながら解散したMr.Nutsも存在した。このMr.Nutsのソングライターのヤハラシュン(Vo,Gt)と、初期のベーシストであるアシハラナオヤを中心に、元PLAYLISTのコーヤ(Gt)、元FOMAREの樹下タクヤ(Dr)で2022年9月に結成したのがer/ca(エリカ)だ。メンバー全員が一度は音楽から離れたものの、やはりバンドを通して自己表現したい、もしくはバンドというかけがえのないロマンにもう一度賭けたいと思った4人の集合体なのだ。
再起に賭けるというと大げさだが、彼らの初デジタルEPに収録されている表題曲「信じる」(2022年6月)には自分や他人を信じたい気持ちも疑念も両方描かれている。再びバンドで人生のスタートを切るタイミングで、こんなに(それこそ)信じられる楽曲を提示するそのこと自体、er/caのスタンスが伺えるというものだ。EP「信じる」に収録された他の楽曲も、ヤハラの素直な気持ちを伝えたいがゆえに言葉にしてしまうと嘘になってしまうような少しねじれた感情が随所に現れる。言葉に対する感度の高さと、素直に伸びていくメロディという彼の歌を軸にして、おおらかな8ビートやライブで盛り上がりそうな2ビートで増幅していく。そのスタイルは日本のバンドシーンにおいての王道で、彼らもそこに躍り出る覚悟は十分なのだと分かる。
ライブ活動も盛んになってきたこの春のタイミングでリリースする新曲はその名も「真っ直ぐ」。ハイハットの4カウントがこれまでより威勢のいい走り出しを予感させ、《真っ直ぐに前を向いて》というシンガロングがさらに加速させていく。16歳で家を飛び出し、人の命を助ける仕事をしたいと言っていた友達を想定して書かれた歌詞に聴こえるが、もしかしたらこれはヤハラ自身のストーリーなのかもしれない。印象に残るのはこれまでの歌詞より、グッとタフになったことだ。何をやっていてもいいから、生きたいように生きていてほしいという、どこかにいる大事な存在への音の手紙。コロナ禍をくぐり抜け、ようやく対バンイベントが開催できるようになったバンド仲間との共闘、そしてそこに集まる音楽好きたち。そんな想像もできる。そもそも以前のバンドも軌道に乗ってきたさなかにコロナ禍に突入したことで、メンバー間で活動に対する意見がすれ違うようになったと、解散理由が綴られていた。しかし、何もできなかったわけじゃない、何もしなかったわけじゃないだろう。時間は経過してしまったけれど、やっぱりバンドがやりたい、そこに気づいたこのバンドならではの強さが、もうここからは真っ直ぐに走るほかないという新たな歌を生み出したのだと思う。痛快なこのショートチューンがこれからのライブの大事な位置で鳴らされることだろう。
INFORMATION
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LIVE<往古来今>
2023年3月11日(土)北海道・札幌PLANT
OPEN 17:00/START 17:30
出演:er/ca、アルクリコール、さよならミオちゃん、PUSH REG LEADs、TRiFOLiUM、でかくてまるい。▼チケット購入
https://t.livepocket.jp/e/er-ca_
early Reflection
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