誰も手を付けてない余白に価値がある。『BLANKMAG』が続けるゲリラ的匿名活動の背景

PARA-特集

文: Hiroyoshi Tomite 

9月1日にパラダイム・シフトをテーマに開催される『PARA-』。コンテンツエリアのアイテムを買い付けを担当したのはストリート的な文脈でNY・日本・アジアのアーティスト達とのコラボアイテム販売やポップアップなどカッティング・エッジな活動を続ける『BLANKMAG』だ。これまで語られてこなかった神出鬼没なコレクティブのヒストリーとルーツに迫った。

9月1日に開催される『PARA-』。コンテンツエリアに台湾でのストリートブランドアイテムを出店することが決定した。その買い付けを担当してくれたのがカルチャーレーベル『BLANKMAG』だ。今やスケーターのみならずファッション業界の重鎮達からも注目を集めるようになったこのレーベル。

これまでRYAN McGINLEY(ライアン・マッギンレー)のアシスタントを務めていたGrace Ahlbom(グレイス・アルホム)とのコラボTを発表。ほかにも台北のストリートシーンと接続したポップアップやコラボを果たしてきた。ストリート的な文脈のもと、カッティング・エッジな活動を続けるBLANKMAGーつまり“空白”と名付けられた神出鬼没のコレクティブのこれまで語られることのなかったヒストリーを探るべくインタビューを依頼した。尚、こちらがWEBインタビューの初公開となる。


高い純度を保ってこれた理由

活動のきっかけは、2015年。これまで仕事とは別のところで集めていたZINEやスケートブランドのアイテムをまとめて発表する場を持ったのが経緯だったという。

「自分のルーツや好きなものを紹介したいと思って。自分自身がアーティストやディストリビューターでもないし、何もないところからはじめる、余白や空白といった要素からBLANKという言葉が思いついて。それからInstagramで自分がこれまでコレクションしてきたアーカイブを紹介しました。インディペンデントで活動している人の作品やZINEから有名どころまで。すると色んなところから声がかかって。ありがたいことに、それに対して人がBLANKMAGっぽいと反応してくれるようになったんです」

はじめて行われた愛知県豊橋の展示の写真

2017年には豊洲のギャラリーtemporary comtemporaryで“District 24”に参加。そこで、若手だったGrace Ahlbom (グレイス・アルホム)と対面する。一緒にコラボTを作らないかと持ちかけたそうだ。

DISTRICT24の展示エリア

「お互い好きなカルチャーや影響を受けてきたものがあって。共鳴するものがあったので、声をかけたんです。相手はアーティストだし、心配しだすとキリがないんですけど、自分としては一緒にやりたい、というシンプルな気持ちがあったのでお声掛けして。…あと根本的な話ですが、ビジネスでBLANKMAGをはじめていないんですよ。会社員としてのしごとが別にあって、アート界隈に属している訳ではないので。好きな人と好きなものを一緒に打ち出すことをしてきただけなんです。

Grace Ahlbom

例えば、僕らの周りには出版社、本屋、ディストリビューターとしてビジネスでやっている人、お金のことや作った後の販売を気にせずやっている人、僕が客観的に思うにはおおよそこの2つに分かれると思いますが、BLANKMAGはどちらにもあてはまらない。そういう違いはあるかなと」

GraceとのコラボTシャツ

有名無名問わず、自分の審美眼にかなったものを使って何かを行う。これまでのコラボレーションについてはこのように語る。

「時間と経費をかけすぎている馬鹿げた活動ですが、自然と自分が気持ちいいコミュニケーションをできる相手とやってきただけなんです。ものを作って発表して、それを自分達の予算内でやりくりするのは、効率とは真逆を行く行為ではあるとは思います。でもそこに人は面白みや価値を見出したり、好きだといってくださったり。そういう面白がってくれる人達ととっておきのネタと情報交換したい。それだけの話です」

イラストレーターface otaさんとのコラボZINE。こちらが初の出版物となる。

話が“純度”に及ぶと、「自分が絶対に貫いて守ってきた価値観」について語ってくれた。

「例えば、こことやったら売れそうだとか、そういうことを考えない。そういう意味でオイシイ話があったときも自分の感覚として『違うな』と思ったときは、お断りさせてもらったりしてきたこともある。そういう意味で、貫いたことはありますね。ただ、それを尖って主張するのではなくて。それぞれの活動に正解と不正解があるので。

自分はコレクターとしてはじめたので“界隈”に属している人間ではなく、やりにくくなるリスクはないので。そういうのも結構意味がない。自然とやるべきことがあって、好きなやつとしかやらないみたいな。それを続けてきたから、今おっしゃった“純度の高さ”を保てたのかもしれません」

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国内外、カルチャーの垣根を掻き分けてストリート・アートシーンを追い続けるレーベル。その膨大な知識とコレクションは他の追随を許さない。突き抜けたコレクションを軸とした展示やゲリラ的なポップアップショップ、台湾ストリートカルチャーを紹介するプロジェクト等、他とは一線を画す動きで話題を集めている。
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