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文: 石角友香 編:Miku Jimbo
Lo-fiヒップホップと歌い手文化が出会った日本ならではのユースミュージックがポピュラーになって随分経つ。気張らず聴けるビート感や音像と、身近なトピックを題材とする歌やラップは、J-POPの一角を担う存在とも言えるだろう。今や膨大な数のトラックメイカーとシンガー、ラッパーがいる中でコンスタントに楽曲をローンチしているのが今回の二人だ。トラックメイカーのvuefloorは元々はギタリストで、トラックメイクを始めてからはブラックミュージックのフィーリングを持った生音のグルーヴと、DAWならではのアンビエントなサウンドを融合。一方のSOTAROBEATSはラッパーでありトラックメイカー。メロディアスなものからタイトに攻めるラップまで幅広く、トラックのカラーもさまざまだ。
今回の「miss you」の前段として、もう少し二人のキャリアや音楽性に触れておこう。そもそもギタリストとしてキャリアをスタートしたvuefloorは曲の構成面でJohn Frusciante(ジョン・フルシアンテ/Red Hot Chili Peppers)、ギターサウンド面ではジャズ・フュージョンのOz Noy(オズ・ノイ)、フレージングではJohn Scofield(ジョン・スコフィールド)の影響を受けているらしい。ビートメイクだけでなく、ギターやピアノといった上モノで曲のイメージを立体化できるバックボーンはそんなところにあるのだろう。一方、SOTAROBEATSがCMM(Idiot Pop)と制作した9月15日発表の新曲「SICK」はロックのビートをヒップホップの解釈で昇華したようなニュアンスが面白い。ただ、この曲の方向性が珍しいようで、これまで出してきた楽曲はチルアウトやシティポップ成分が多めだ。
二人各々の活動以外に“Seasidegirl Studio(SSGS)”名義でのユニットも組んでおり、そのイメージは「海辺にある架空のスタジオ」なのだとか。確かにリラックスしたビート感、ジャズやネオソウルを思わせるvuefloorのギターやピアノのフレーズは景色が浮かぶし、SOTAROBEATS単体でも、フィーチャリング・ボーカルを迎えた場合も、チルでメロウなメロディを楽しめる。
その二人が今回はSSGS名義ではなく、vuefloorがSOTAROBEATSというラッパーにトラックを提供し、制作したのが「miss you」だ。SSGS名義で女性ボーカルをフィーチャーする場合、女性目線での儚く歯がゆい恋が歌われることが多かったが、本作は男性目線による恋の逃避行、もしくは短いバカンスといったニュアンスだ。東京では自分に素直な行動ができない彼が、旅先でようやく彼女に対する想いを態度に表せる、そんなリリックをリアルに感じさせる飾らないラップがいい。
vuefloorによるトラックはレコードノイズのような音に始まり、渋めのギターリフ、ビンテージなサウンドが全体的にスモーキーな味わい。イントロで曲を引っ張るセンシュアルなギターリフには確かにJohn Fruscianteの影響も見える。そして曲の背景でループするナチュラルなギターリフの味わい深さが交互に登場することで、シンプルなトラックが立体的に聴こえる効果を生んでいる。さらに今回、控えめながら生音ベースがいいフックになっていて、それもLo-fiヒップホップの域を超えた新しい聴感の理由になっていると思われる。
ユースカルチャーと共に成長してきたLo-fiヒップホップが、トラックメイカーの個性によってさまざまな楽曲へ枝葉を伸ばしつつある今。この「miss you」は今日的なジャズやR&Bとも共振する、少し大人になった若者に響くグルーヴミュージックの萌芽と言えそうだ。
RELEASE INFORMATION
vuefloor&SOTAROBEATS「miss you」
2023年9月27日(水)リリース
early Reflection外部リンク
early Reflection
early Reflectionは、ポニーキャニオンが提供するPR型配信サービス。全世界に楽曲を配信するとともに、ストリーミングサービスのプレイリストへのサブミットや、ラジオ局への音源送付、WEBメディアへのニュースリリースなどのプロモーションもサポート。また、希望するアーティストには著作権の登録や管理も行います。
マンスリーピックアップに選出されたアーティストには、DIGLE MAGAZINEでの動画インタビューなど独自のプロモーションも実施しています。▼Official site
https://earlyreflection.com
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