文: 石角友香 編:Miku Jimbo
87と書いて“ハナ”と読む、2004年生まれのシンガーソングライターがこの名義初のシングル「primo」をリリースした。シンガーソングライターであると同時にDJとしても活動しており、自身がオーガナイズするパーティ<By the way>を不定期で開催。広義のダンスミュージックをスピンしているようだが、主にベースミュージック寄りな様子。現在はまた変化があるかもしれないが、好きなアーティストとしてベルギー発のプロデューサーで、ラップとアンビエントミュージックを接合するビートメーカー・Alex Lustig(アレックス・ラスティグ)を挙げており、音楽性に通じるものを感じる。また、羊文学の名前も挙げていて、ジャンルや表現形態ではなく世界観として理解できる。音楽歴は習い事でドラムを学んだ経験を持ち、音楽専門学校でDTMも習得。学校では作詞・作曲・編曲・ミックス・マスタリング・歌のプロデュースを学んだそうで、作品をセルフで完成できる素地を10代でモノにしたのだろう。目下在学中で来春卒業予定というとびきり若いアーティストだ。
これまで旧名のearth blossom名義でYouTubeにアップしている作品は「CREAM SODA」という無邪気だった子どもの頃の思い出や心象をチルなトラックに乗せた曲と、「蘇」と題した輝度の高いシンセリフが印象的なインスト。後者では撮影も自身で行なっており、頑迷ではないけれど自分の想像をセルフプロデュースで完結させるこだわりを感じる。
そして今回、87名義での初作となる「primo」はミックス、マスタリングも友人と試行錯誤しつつ行なったようだが、その程よい近さと温かくも冷たくもない独特の肌触りを残す音像にかなりのスキルを感じてしまった。歌詞やメロディじゃないのか?と突っ込まれそうだが、もちろんそれもオリジナリティがある。が、そのオリジナリティを見知らぬリスナーに届ける実像の大切さをこの人は知っているのだろう。アブストラクトかつアンビエントなトラックに声のサンプリングが懐かしさをかき立て、淡白だがR&Bやソウルをベースに持っている歌唱がじんわり入ってくると、グッと記名性が上がる。歌われている内容は恐らくフロアで音楽と一体になる恍惚感や、その記憶に対する愛おしさ。それはDJでもありシンガーソングライターでもある87の最も大切にする感覚なのだろう。イタリア語で“初め”を意味するprimoをタイトルにしたのはアーティストとしてのゼロ地点を思わせる。シンガーとしてのスタイルは少し違うが、プロデューサーであることや日本語のオルタナティヴR&Bの繊細さに登場当時の小袋成彬を少し思い出した。今後もコンスタントに曲を届けてほしい逸材。
RELEASE INFORMATION
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1st Single『primo』
2024年12月11日(水)リリース
〈early Reflection〉
early Reflection
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https://earlyreflection.com
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