文: 石角友香 編:Kou Ishimaru
今年3月リリースのデビューシングル「地獄の果て」、9月リリースの4thシングル「夏のせい」をこのコーナーで紹介してきたサウルス。男女混成のメンバーはボーカル&ギターでメインソングライターのやまだをはじめ、くるみ(Ba.)、ふぬ(Dr.)、あらち〜(Gt.)の4人。全員が音楽大学在籍中で平均年齢20歳の次世代バンドだ。ちなみに同学出身の先輩にはマカロニえんぴつのはっとりやSEKAI NO OWARIのSaoriがいる。今年はコンスタントなリリースはもちろん、日本最大級のサーキットイベント<TOKYO CALLING>に出演。下北沢を拠点とする彼らは下北沢Daisy Barで夕方のスロットで登場し、さらに新しいオーディエンスにパフォーマンスで訴求。そして最新シングル「ラブリー・フランクリン」の名を冠した自主イベントも11月7日に終えたばかりだ。
これまでもおのおの懸命に生きる人の、それでも救われない部分にまで心を通わせて並走するような楽曲をリリースしてきた彼ら。たとえば「地獄の果て」では疲れを自覚できないほど自分の心を見失った人に、励ましというより自分たちの音楽で心を取り戻させるような破格の明るさをバンドサウンドで明示していた。「ええじゃないか」では、一般的な価値観が崩壊するような災害が起きてもなお自分がやりたいことが明らかにある状況を歌うし、「パーマ」では人の評価に揺れながらも自分の“好き”をどこまでも探そうとする。バンドの趣向に少し変化が見られた「夏のせい」も、夏休みの恋の予感ソングではありつつ、「人を思う気持ちは季節による錯覚じゃないよね?」と自問自答している。ポップかつ明るい気持ちになる曲調と、常套句に疑問を呈する絶妙なバランスが毎回いい引っ掛かりを残してくれるのだ。
今年早くも5作目の配信シングルとなった「ラブリー・フランクリン」。すでにライブで披露されている、サウルスとしてはミディアムテンポが新鮮に響く楽曲で、プロデューサーはデビュー作以降プロデュースを手がけるRyo‘LEFTY’Miyataが担当している。描かれているのは、生きることにだいぶ疲れてしまった友だちに精一杯かけられる言葉と寄り添う態度だ。イントロのデッドなドラムサウンドからして、“無理に聞かなくてもいいけど僕はこう思ってる”というフラットな距離感がある。でもリードギターでは、ブルージーで感情が籠もったオブリを入れてくる。そのどちらもが本心を表現しているようで、いつの間にかじっくり耳を傾けている。簡単にしんどい気持ちは変わらないことを“僕自身”も知っているんだろうな、と思う。
パンチラインだらけの歌詞の中でも《お腹いっぱい食べても死にたいのなら ペコペコになるまで話をしよう》というくだり。これはあくまでも曲ではあるけれど、曲が長い夜を一緒に過ごしてくれることだってあるのだ。音楽ジャンルがどうとか、曲の即効性がどうとか以上に、今どんな曲が聴きたかったのか気づく機会でもある。なお、Spotifyのプレイリスト『New Music Wednesday』や『RADAR:Early Noise』にも選出。曲の存在感は確実に広がりつつある。

RELEASE INFORMATION
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New Single「ラブリー・フランクリン」
2025年11月5日リリース
Label:〈Victor Music Arts,〉
EVENT INFORMATION
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<サウルス自主企画 1st mini Album「HELLO MY LOVE」レコ発編>
2026年3月28日(土)
at 東京・Shibuya eggman
OPEN 18:00 / START 18:30
チケット 前売 2,500円 / 当日 3,000円(共に+1Drink代)※対バンは後日発表
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