現実と非現実の交差点。メタポッププロジェクト・Frascoの誕生とシンバム戦略とは | Newave Japan #23

Newave Japan

文: ヨシヤアツキ  写:遥南 碧 

音楽ライフを掘り下げるインタビュー企画『Newave Japan』。23回目は、耳の早い音楽ファンの間で注目を集めている正体不明のメタポップ・プロジェクト、Frasco。彼らが提唱する新たな音楽のリリース形態“シンバム”とは一体なんなのか、プロジェクトの成り立ちやアーティスト活動に対する彼らの考えを聞いてきました。 L→R タカノシンヤ(曲・企画)/峰らる(歌・デザイン)

手探りで築き上げた自分たちの世界観

ーFrascoというプロジェクトはどんなコンセプトで活動されてるのでしょうか?

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タカノ:

化学反応です。Frascoっていう容器はポップスという枠組みなんです。その中に色々なモノ(音だったり、言葉だったり、コラボ相手だったり)を入れて化学反応を起こして面白くてキャッチーなものを作りたいと思ってて。あとは現実と非現実のミックスですね。これはFrascoのロゴにも現れているんですけど、本当のフラスコって注ぎ口が付いてないんですよ。つまりこの物体も実は非現実世界の物なんです。現実のフラスコではないって事を表してて…

ー確かに違いますね。どういった意味が込められているのですか?

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タカノ:

この形は現実世界なら醤油差しなんですよね。初見の人はうちらのことをミステリアスに感じると思うんですけど、実際は結構フレンドリーなので、お茶の間に置いてある醤油差しのように日常に溶け込んでいきたいっていう意味も込められています。

ー現実と非現実というワードが出てきましたが、お2人が好んで聴く曲もそういった曲が多いのですか?

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峰:

実はアーティストにハマるということがあまりないんですよね。音楽のジャンルとかもよくわからなくて。歌うとか、楽器を演奏することは好きなんですけどね…(笑)。だからリスナーではないんだろうなって思います。バンドの課題曲だったり、人に勧められた曲を聴いてることが多いです。
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タカノ:

でもそういった感覚がFrascoをFrascoたらしめていると思っています。何か1つの音楽に影響を受けることがなく、独自の客観性のあるボーカルというか、彼女のフラットな歌い方が僕らの楽曲の世界観を強くしていると思っているので。

ー意外な聴き方ですね。ではタカノさんはどうでしょうか?

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タカノ:

学生時代はUKロックとかバンドでカバーしてました。あと昔よく聴いてたのはBECKですね。実験的でありPOPさもあり、バランスがすごいですよね。でも僕も体系的に何かのジャンルを追う事はしてなくて、その時々で好きなジャンルが変わりますね。HIP-HOP、DUB、ネオソウルも聴くし、ヴェイパーウェーブとかフューチャーベースとかも聴いてます。その中でもキャッチーなものが好きという傾向はあります。エレクトロやテクノでいうとテイトウワさんは昔から尊敬してます。Deee-Liteとかめっちゃ好きですね。自分達の世代よりはるか昔ですがいつまでも色褪せない。詞の影響でいうとかせきさいだぁさん、キリンジさんあたりでしょうかね。

ーFrascoとして、影響を受けているアーティストはいますか?

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タカノ:

Frascoとして影響を受けてるアーティストというのは様々なので難しいですね。自分達が今まで色々な音楽を聴いてインプットしたものが化学反応を起こして、結果が今の楽曲となってると思います。
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峰:

特定しては思いつかないんですが、多分無意識のうちに沢山いると思います。

ー結成のきっかけを教えてください。

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タカノ:

3年前に共通の知人の飲み会で知り合ったんですけど、その時にアサラトっていう民族楽器を演奏していたら峰さんがすごく気に入ってくれて。「リズム感めっちゃいいね」と最初に言われたあとに、すぐにバンドやろうって誘われたんです。
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峰:

ずっと団体で音楽を演奏してきたんですけど、その時はちょうどやってない時期だったんです。そんなところにリズム感が良さそうな人を見つけたので、誘ってみました。
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タカノ:

急にバンドをやろうって言われてもしばらく楽器も弾いてなかったし、バンドって結構大変じゃないですか。だから、機会があればやりましょうと言ってその時は流したんです(笑)。でも、そのあとに知り合いから峰さんが制作したアニメーション動画を教えてもらって、自作のBGMとかmúmのような北欧エレクトロニカ風な曲になっていて完成度が高くて。このセンスの持ち主とはなにかやったほうがいいって思ったんです。
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峰:

その後長文で熱量の高い感想送ってきてくれて(笑)。それで集まって、餃子食べながら何ができるか話ました。とりあえず、音楽をするグループということだけしか決まってませんでしたね。

ー今のスタイルに落ち着いたのは、その時に話し合って決めたのですか?

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峰:

その時に私が、曲を作ってみてって彼に言ったんです。
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タカノ:

そう言われたものの、自分はバンドでベースをやってた経験しかなかったので、作詞作曲はもちろん、音楽的な知識とか全然なかったんですよ。なのでまずはGarageBandの使い方を峰さんにレクチャーしてもらいながら、ピアノのコードをネットで調べて、試行錯誤して作りました。それで完成したのが「Sleepwalking」なんです。完成した音源を送ったら、今度は歌詞お願いって話になって。色々考えたんですが、小っ恥ずかしくなってしまって…(笑)。

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峰:

歌詞を出すのをすごくためらってたよね(笑)。
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タカノ:

なんせ歌詞を書くのも初めてだったので、その照れ隠しもあって、1分間で適当に言葉を当てはめるってことをやってみたんです。その時に曲の冒頭にある“玉ねぎで涙あふれた”っていう歌詞ができて。それがなんかしっくりきたので、これで行こうということになりました。その時に一気にFrascoの路線が決まった感じがしましたね。
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峰:

同時に私も作ってみたんですけど、彼がめっちゃ早く1曲を仕上げてきて…私はすごく時間がかかったので、曲作りはお願いすることにしました。歌詞もシュールな世界を広げていく感じがいいなって思ったんです。

次ページ:新たなリリース形態、“シンバム”とは。

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